松田ゼミに所属するゼミ生(谷口)は、卒業研究として「拡張現実感(AR)を用いた書籍情報提示システムの試作とそのユーザー体験の評価」を行いました。今回は、3月10日、慶應義塾大学の矢上キャンパスで開催され情報処理学会が主催する第78回全国大会で発表してきましたので報告します。論文はここをクリックしてください。

1.情報処理学会に関して

データベースシステム、ソフトウェア工学など情報処理全般にわたる分野の調査・研究を目的とした機関です。全国大会は情報処理学会が年1回(春季)開催する学会最大のイベントです。最新の学術・技術動向や情報に関する新しい研究成果やアイディア発表を通し意見交換・交流を行っています。

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2.発表内容

書店で書籍を購入する際にユーザーはあらすじや表紙を参考にしています。しかし、このようなあらすじを読んだり、表紙を見たりするには、本棚から本を取り出し、手に取り、読んでは元の本棚に戻すという動作を繰り返す必要があります。
本研究では、このような手間を省略することを可能にする書籍情報提示システムを試作し評価しました。

本システムは、Processingで開発し、拡張現実感用のライブラリとしてNyAR4psgを使用しました。システムを起動すると、カメラを通して得られた映像の上部にファインダーが表示され、ファインダーにマーカーを合わせるとあらすじが表示されます。

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本システムの評価方法は15名の女子大学生を対象に行いました。対象書籍は漫画とし、事前アンケートで得た、被験者の知らない10種類の漫画3巻ずつをA、Bの2セット、計60冊を用意し、被験者には、指定された本(主人公の概要を示した)を、手に取って探す方法(以下、手取)でAセットから、本システムを使用する方法でBセットから探してもらいました。指定された本を見つけるまでの本の参照回数と時間をそれぞれの方法で計測し、最後にアンケートを行いました。

実験の結果、被験者全員の手取での平均探索時間は12.34s(平均探索回数5.3回),本システムでの平均探索時間は10.42s(平均探索回数9.1回)となりました。この結果から、手取の遅い方の2つのデータと、本システムの速い方の2つのデータを外れ値として除いたデータを用い平均探索時間に関しt検定を行った結果、有意差が認められました(p= 0.0028 < 0.05)。手で本を探すよりも本システムで探索するほうが一冊当たりの本の探索時間が短くなることが証明できました。

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しかし、探索時間は本システムの方が短かったのですが、両システムの差は2秒程度という結果になりました。また、アンケート結果から本システムで早く探せたと感じた人は40%と半分以下にとどまり、ユーザー体験的には十分ではないことわかりました。この原因としてはファインダーにマーカーを合わせるのが大変だったという点と、手取りの場合は表紙、背表紙がすぐに見れたが、本システムではあらすじのみだったため目的の本のイメージがしにくかったという点があります。今後の課題としてはマーカー認識の手間を軽減し、ユーザー体験をより向上させる、あらすじ以外にも表紙の画像を表示させることなどで、自分の読みたい書籍をより選びやすく支援するなどの点があげられます。

3.発表に関して

全国大会当日は、午後の部で発表を行いました。とても緊張しましたが、当日までに何度も練習を行ってきたので何とか練習通りに発表することができました。発表後4人の方から質問、コメントをいただきました。

  • マーカーが、すべての漫画についていないのはなぜか
  • この研究は選ぶ時間を短縮したいのか?
  • 漫画喫茶などで使えば面白そう

等、想定していた質問もされましたが、緊張してしまいうまく答えることができず、もっと自分の研究に対して何でも答えられるようにしないといけないということを実感しました。

4.終わりに

3年の秋ごろから本研究を始め、システムの制作や実験で大変な時期もありましたが無事に発表を終えることができました。発表後、他大の教授から面白い研究だったと仰っていただき、自分の研究を他の学生などに知ってもらうとても良い経験をさせていただきました。この経験を社会でも活かしていきたいです。

 

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