<松田ゼミ-26 前へ> 報告者: 山下愛加(松田ゼミ)

卒業研究として行った「 Kinectを用いたストレッチによる動画制御システムの開発と評価 」を、3月6日にオンライン開催された第82回情報処理学会全国大会で発表してきましたので報告します。ここ をクリックしてください。

1.情報処理学会に関して

情報処理全般にわたる分野の調査・研究を目的とした学会で、全国大会は情報処理学会が年1回(春季)開催する学会最大のイベントです。大会では最新の学術・技術動向や情報に関する新しい研究成果やアイディア発表を通し意見交換・交流が行われます。

2.発表内容

近年、YouTubeやAmazonプライム・ビデオなどの動画配信サービスでは様々なコンテンツが増加し、それに伴い視聴者が劇的に増えています。また、同様の動画配信サービスをTVで利用できるサービスが注目されています。しかし、このような動画視聴は長時間同じ姿勢になりやすくVDT症候群でよく見られる首や肩の凝り、腰痛などの症状を起こしやすいという問題があります。そのような症状の対策としては、体の凝りをほぐす効果のあるストレッチを定期的に行うことがあげられます。そこで本研究では、ストレッチを行うことで動画の制御を可能とするシステムを開発し、24名の女子大学生を用いた実験と評価をしました。

本研究の事前調査として、25名の女子大学生を対象にストレッチと動画配信サービスに関するアンケートを実施しました。その結果、 24名(96%)がストレッチを毎日行っていないことが分かりました。理由としては、15名(60%)が「面倒だから」、「長続きしない」と回答しました。また、動画視聴に関しては20名(80%)の学生が長時間より短時間動画を視聴し、ジャンルは音楽系(ASMR、演奏など)が16名(72.7%)と最も人気が高く、続いてゲーム系(ゲーム実況など)、美容系(メイク、ダイエットなど)が11名(50%)と並びました。

山下_システム概要

本システムは、骨格情報の取得機能を持つMicrosoft社のKinect Xbox360を用いており、取得した骨格の座標を元にストレッチのジェスチャを判定し動画を制御することができます。開発には、Processing、Kinect用にKinect4WinSDK、動画制御用にVideoライブラリを用いました。

システムを起動すると、練習用動画1つと事前調査より人気の高かった音楽系、ゲーム系、美容系の5つの動画が表示され、決められたストレッチをすると動画が全画面で再生されます。ストレッチは学生に馴染みのあるラジオ体操第一からVDT症候群でよく症状の出やすい首、肩、腰、背、脚を伸ばす効果のあるものを選び、動画の制御内容も事前調査で多く見られている短時間動画を視聴することを想定して選びました。

山下_システム構成
本システムの評価は、24名の女子大学生を対象に、前の試行の影響が相殺されるように以下の4パターンに被験者を分けて動画を3回見てもらう実験を行いました。実験後には、操作や継続性に関する21項目のアンケートを実施しました。動画内容は、事前調査で人気の高いYouTubeの音楽系、ゲーム実況、美容系の短時間動画(3分程度)としました。

ストレッチによる操作感: ストレッチの操作のしやすさを5段階で評価しt検定を行った結果、ON、一時停止・再生、OFF操作は操作間に有意差は認められなかったためストレッチ間で操作しやすさに違いはないと言えます。一方、UP・DOWNの肩をまわすストレッチと前屈、横に傾けるストレッチでは有意差が認められました。理由として、肩をまわすごとに少しずつ音量を変えていく肩をまわすストレッチは音量の大きい変化から小さな微調整まで細かく調整ができ、最も簡単に操作がしやすいと感じた被験者が多かったからだと考えられます。

山下_ストレッチ操作性

操作の覚えやすさ: ストレッチの操作の覚えやすさを5段階で評価しt検定を行った結果、⑴ONの両手を伸ばすストレッチとその他全てのストレッチ、⑵UP・DOWNの横に傾けるストレッチと両手を伸ばすストレッチ及び前屈、⑶OFFの前屈とその他全てのストレッチでは有意差が認められました。理由として、⑴は見たい動画の位置で両手を停止し選択をする操作と、普段PCで動画視聴するようにマウスで動画選択をする操作が似ているため分かりやすいからだと考えられます。⑵は上下の動きを行うストレッチであり、音量の上げ下げが手の動きと対応していて分かりやすいことが理由として考えられます。⑶は前屈が顔を下に向け画面が見えづらい姿勢であるため、動画の再生や視聴中のストレッチとしては不向きだと感じる被験者がいたことが理由として考えられます。

山下_操作の覚えやすさ

ストレッチの継続性: 毎日ストレッチができるかを5段階で評価しt検定を行った結果、全てのパターン間で有意差は認められなかったため、パターンによる差はないと言えるということが分かりました。また平均4、標準偏差0.1で、本システムの動画視聴で毎日の定期的なストレッチができる可能性が高いことが分かりました。これに関しては、「好きな動画を見ながら出来るので続けたい」などの意見が得られました。

3.発表に関して

全国大会当日は、大会2日目の午後の部で発表を行いました。当日までの練習の甲斐あって、とても緊張したものの練習通りに発表することができました。発表後には4人の方から質問、コメントをいただきました。
①Kinectを用いたのであれば、視聴する中で姿勢が悪くなってきた際のみストレッチを促すほうが良いのではないか
②卒業論文か修士論文か
③今後はニーズが高まっていくシステムだと思う

4.終わりに

発表では想定していなかった質問もあり、緊張しましたが、何とか回答して無事に発表を終えることが出来ました。今回の学会発表では、他の学生の発表を聞けたり、研究を褒めていただいたり、自分にとってとても良い経験になりました。今回の経験を、これからに生かしていきたいと思います。

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