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日本の原風景を歩く

2017年10月17日

 ことしの夏合宿は、関東地方出身者の多いわたしたちにはなじみの少ない奈良の歴史探訪がテーマでした。行政の観光PRについて学ぶ目的もありました。豊かな古代遺産を生かして観光開発に力を入れようとしている天理、桜井両市のご協力をいただき、日本の原風景を歩く濃密な3日間でした。

 1日目は、あいにくの豪雨で京都から出る電車が遅れましたが、昼前には天気も回復。天理市職員の方からオリエンテーションを受けたあと、峯塚古墳へ。ヤブカの襲撃を受けながら、本物の玄室に入るのは初めての経験でした。大小さまざまな三角縁神獣鏡などおびただしい数の銅鏡が出土したことで有名な黒塚古墳(と展示館)も印象的でした。銅鏡の細密な文様は息をのむような美しさです。途中、天理市から桜井市へ続く古道「山の辺の道」をハイキング。休憩所「トレイルセンター」では、思いがけなく飲み物とおいしい牛乳プリンをごちそうしていただきました。夕刻に見学した天理教の「夕づとめ」も圧巻でした。おそらく日本最大の木造建築の威容と、礼拝の荘厳さはまさに異世界体験でした。

 翌日の早朝、日本書紀にも出てくる石上神宮の拝殿に上がり、お話し上手な神官から直々に故事来歴の説明を聞くことができました。その後、隣の桜井市へ。『源氏物語』にも登場する名刹の長谷寺や、これも日本最古の神社の一つである大神(おおみわ)神社、それに卑弥呼のお墓の可能性があるともいわれる箸墓(はしはか)古墳、その近くで発掘された纏向(まきむく)遺跡(邪馬台国の本拠か!)などを巡りました。お昼に食べた三輪素麺。現地で食べると格別です。

 最終日は、近鉄奈良駅に近い法相宗総本山・興福寺を見学。僧侶の方の講義を聴き、再建中の中金堂を見学。やぐらを伝って屋根の高さまで案内していただきました。建築中の屋根瓦に直接触れるのは感動ものでした。来秋には落慶法要が営まれます。

 役所のマイクロバスで案内していただいた天理、桜井両市の職員の方々、見学を快く受け入れていただいた由緒ある神社仏閣の神官、僧侶の皆様、そして宿舎を提供してくださった天理教麹町大教会と詰所の皆さま、本当にありがとうございました。かぎろひコミュニケーションズ代表の中川さん、お世話になりました。(H・Y)
 (教員コメント)個人的には宗教のあり方が見えたように思います。日本の古代には、まず自然崇拝に始まる土着的信仰があり、そこへ外来宗教である仏教が伝来。激しい葛藤のあと、両者が融合した形が奈良の宗教の姿でした。ところが日本の近代化の過程で、神仏が分離され、土着信仰の部分が神道として国家イデオロギーに再編されてしまったところに、日本の宗教信仰の不幸があったのではないか。天理、桜井両市の神社仏閣を見ていると、かつてのおおらかな信仰世界を想像することができます。(了)