携帯電話の利用行動

 

【1. 研究目的】

 最近の若者の友人関係は「広いが浅い」、友人がいないのではない、常に一緒に過ごす友人の数は多いが、議論や悩みごとの相談はせず、深入りしないようにつきあっている。このような若者の必需品となっているのが携帯電話である。しかし、若者の友人関係は本当に希薄化しているのだろうか。それは携帯電話の爆発的な普及と何らかの関係があるのだろうか。この論文では大学生を対象とするアンケート調査を行い、携帯電話の利用実態を整理する。そのアンケートや先行研究の資料・文献を参考にして、利用者達が通話や通話以外の様々な機能やサービスを利用することを通じて、どのようにコミュニケーション行動を展開しつつ、対人関係を形成しているかを明らかにする。

 

【2. 研究方法】

 大学生の男女、258人を対象に配布回収方法でアンケートを実施した。また、文献や郵政省などの動向調査資料・ホームページ等も参考に調査した。

 

【3. 研究結果】

*  携帯電話の所有率は9割。携帯電話を持っていることが当たり前のようになっている。

*  文字メールや携帯電話でのインターネットの普及率も約半数以上の人が利用しており、ショートメッセージは8割、ケイタイ・Eメールは6割、ケイタイ・インターネット5割と携帯電話を通話の目的だけでなく、コミュニケーションツールとして色々な場面で利用している。

*  利用頻度を見てみても全体の8割の人が1日に1回は携帯電話で通話をしている。

*  文字メールの利用頻度も約半数の人が1日に1回はメールのやり取りを行っている。

  ≪利用頻度別クロス集計結果≫                     ≪男女別クロス集計結果≫


 

高額利用者

低額利用者

所持理由

友達との連絡

友達との連絡

緊急連絡用

利用目的

待ち合わせ

友人・恋人

待ち合わせ

通話の受発信

同量

受信

利用相手

恋人

同性の友人・知人

 

 

 

 

所持理由

友達との連絡

友達との連絡

 

 

通話頻度

多い

 

 

文字通信

少い

 

 

 

利用料金

高額傾向

 

 

使用時間

短い

 


 

【4. 結論】

 大学生の利用状況からみえてくる携帯電話は、それが普及初期に与えられていた「外出先での緊急の連絡手段」ではなく、「いつどこにいても好きな相手とつながるためのメディア」となっていることだ。若者の友人関係は希薄化しているのではなく、携帯電話を駆使することによってより社交的になっている。社交的であるがゆえに広がる対人関係を常に選択する必要があると思われる。若者の間では友人関係は重視されているが、同様に他人から煩わされたくないという志向も強い。こういった相矛盾する志向を実現するために、発信者番号通知や文字通信などの携帯電話に付属する機能を利用して「いつ」「誰と」つきあうのかを「自分で」選択しているのである。