若者ことばについての研究

                                                                                       

【問題意識】

若者ことばは一般に「ことばの乱れ」だと言われ批判されています。事実、NHKの放送文化研究所の調査によると全体の84%もの人が「乱れている」と答えています。ところが、言語学研究者は、若者ことばは仲間で会話の「ノリ」を楽しむ手段であり、「ノリの文化」ととらえています。

若者ことばは本当に「ことばの乱れ」なのでしょうか。このことについて、若者ことばの特徴、機能を調べ、実際に若者ことばを使っている大学生を対象としたアンケートをもとに検討していきたいと思います。

【方法】

  《調査の概要》

1)               調査目的  現在の若者ことばの実態を調査する

2)               調査時期  200012月中旬〜下旬

3)               調査方法  配布回収方法

4)               調査対象  大学生の男女

              (サンプル数:全体 155名、男性 21名、女性 134)


【結果】


                          

 

 

カイ自乗値 自由度 確立 有意差判定           14.32      1     0.0002  [**]

 


 実際「若者」は44%の人しか若者ことばを「ことばの乱れ」だと思っていないことが分かりました。しかし、若者ことばに関する考えは若者ことばを批判する人たちが考えているよりもしっかりとしたものだと考えられます。このことは、若者ことばを直そうと思う理由や、実際若者ことばを使用して怒られた人は若者ことばを直そうと考える率が高いということから考えられます。

 しかし、いくら自覚をもっていても癖で若者ことばが出てしまうということがあります。アンケートの結果を見ても、「フォーマルな場で若者ことばを使ってしまった」という人の95%は「使ったことに気がつかなかった」と答えています。ひょっとしたら、若者ことばとしての認識率の低い「略語」や、「ら」抜きことばは今後一般語として定着していくかもしれません。


【考察】

  若者はどの時代においても常に新しいことばを生み出してきました。そして、今後も新しい言葉を生み出していくでしょう。言葉は時代によって変化するものであり、そして、言葉は文化であります。今の言葉も今という時代を象徴しているのではないかと思います。

 若者ことばが「ことばの乱れ」かどうかについて考えてきましたが、「乱れ」かどうかはそれほど問題ではないのではないかと思います。むしろ大事なのは、若者を受け入れる社会ではないかと思います。ことばは社会を反映しているものですから、その社会がしっかりとしていれば、言葉もある程度以上乱れるということはないのではないかと思います。