GPSを用いた散歩モチベーション向上のための音声出力システム


 近年、生活習慣病予防や気分転換の手段として「散歩」の重要性が再認識されている。しかし、自宅周辺などの見慣れた生活圏における散歩は、風景のマンネリ化により退屈さを感じやすく、長期的な継続が困難であるという課題がある。既存の散歩支援アプリケーションの多くは、ゲーム要素や視覚的なナビゲーションに依存しており、ユーザの関心がスマートフォンの画面内に留まり、実環境そのものへの関心や愛着の醸成には至りにくい。
 そこで本研究では、画面を注視することなく、聴覚情報のみを用いて日常空間の意味的拡張を行う位置情報連動型散歩支援システム「LocaLingo」を提案する。本システムは、ユーザが特定のスポットに到達した際に、その地域の歴史や由来に関する音声を自動再生することで、見慣れた風景に対する再発見を促すものである。
 提案システムの有効性および適切な情報提示手法を明らかにするため、女子大学生10名を対象とした評価実験を行った。実験では、音声ガイドの演出を「キャラクター対話型(会話調)」と「ナレーション解説型(説明調)」の2条件に設定し、ユーザの心理変容と行動変容を比較分析した。実験の結果、歩行速度の変化率において、解説型グループが2.9%の低下に留まったのに対し、対話型グループでは12.3%の大幅な低下が見られた。これは、キャラクター同士の掛け合いがユーザの立ち止まりや見回しなどの探索行動を強く誘発し、環境への没入度を高めたことを示唆している。また、システムユーザビリティ評価(SUS)においても、対話型グループが統計的に有意に高いスコア(平均83.5点)を記録した。以上の結果から、日常的な散歩支援において、キャラクター性を用いた情緒的な情報提示は、ユーザの実環境への没入を促進するだけでなく、システム全体の使いやすさの評価をも向上させることが明らかとなった。