本研究では,MR(Mixed
Reality)を用いた脱出ゲーム体験に着目した.実際に脱出ゲームを構築し,構築した脱出ゲームでは,リアル空間を基盤としてバーチャル演出・空間変化を重ねることで,ユーザの認知と没入感がどのように変化するかを明らかにすることを目的とした.
脱出ゲームには設計課題があり,オフライン型は物理ギミック更新の高コストと空間演出の表現制約,オンライン型は画面中心の情報取得による空間実在感と没入感の不足が問題となる.そこで本研究では,現実の1室でバーチャルギミックを重ね,空間探索と推理を行う,MR脱出ゲームシステムを提案した.バーチャルギミックには,壁の破壊や炎のギミックなど非現実的な,MRならではの演出を取り入れた.
システムの有用性を評価するために,大学生6名を対象とした実験を行った.実験では,リッカート尺度による体験評価(満足度・演出の受け入れ・空間への納得度)と,IPQによる評価,自由記述による印象変化調査を実施した.実験の結果,リッカート尺度による体験評価では満足度・演出の受け入れ・空間への納得度の3観点で高評価を得た.IPQではSPとREALの平均値が高く,MRの空間設計がユーザの実空間認知と調和していたことと,バーチャル表現が違和感なく世界観として受け取られたことが確認できた.また,リアル空間そのものの印象変化と記憶の強まりが多く報告された.物語の情動(恐怖・不気味さ・熱さなど)に影響された部屋の印象変化が起こると考えていたが,実際にはユーザの意識をリアル空間の観察と記憶へ向けるきっかけとして強く作用していた可能性が示唆された.