近年,SNSやニュースアプリの普及により,人々は日常的に多くの情報を容易に得られるようになっている.レコメンド機能によって,ユーザの興味に合った情報が効率よく提示され,利便性が高い.一方で,興味のある話題に情報が偏りやすく,興味の範囲外の情報に触れる機会が減少しているという問題がある.その結果,本来知っておくと役立つ情報や,新たな関心につながる情報に気づきにくくなっている可能性がある.
このような背景を踏まえ,本研究では,ユーザの作業を妨げることなく,興味の範囲外の情報に自然に気づくきっかけを与える手法として,アンビエントディスプレイの考え方に着目した.特に,通知のような強制的な情報提示ではなく,心理的負担を抑えた形で情報を提示する方法として,可愛いキャラクターを用いた情報提示システムを提案した.
提案システムでは,PC横の小型ディスプレイ内をキャラクターが移動しながら,天気およびニュース情報を吹き出し形式で提示する.キャラクターの存在により,情報提示に対する抵抗感を軽減し,作業中でも自然に視界の端で情報に気づける構成とした.情報は一定間隔で自動的に切り替わり,ユーザが操作を行わずに情報を受け取れる点を特徴とする.
本システムは,Unityを用いて実装し,Windows環境で動作するアプリケーションとして開発した.情報は天気およびYahoo!ニュースのエンタメカテゴリから取得し,短文で表示することで作業への影響を抑える設計とした.
提案システムの有効性を検証するため,評価実験を実施した.実験では,実験参加者にシステムを一定時間利用してもらった後,Googleフォームを用いたアンケート調査を行った.評価項目は,作業への影響,情報提示の負担感,興味の範囲外の情報への気づき,キャラクターに対する印象などである.
実験の結果,多くの参加者が,提案システムによる情報提示は作業の妨げになりにくいと感じたと回答した.また,普段あまり見ない情報に気づいたと感じた参加者や,興味の幅を広げるきっかけになると評価した参加者が多数を占めた.さらに,キャラクターの存在が,情報提示に対する親しみや安心感につながっていることが示唆された.
以上の結果から,本研究で提案したシステムは,作業環境に溶け込みながら,ユーザの興味の範囲外の情報への気づきを促す手法として有効であると考えられる.一方で,作業内容によっては情報提示を不要と感じる場面もあり,今後は利用状況に応じた情報提示方法の調整が課題として挙げられる.