ネイル施術中のプロジェクション提示が与える影響


近年,セルフネイルは手軽に楽しめる美容行為として広く普及している.一方で,セルフネイル施術では,爪という小さな対象に対して均一な塗布や意図した模様配置を行う必要があり,特に初心者にとっては塗布位置や形状の把握が難しいという問題がある.このような課題に対し,本研究では,ネイル施術中に爪上へ補助的な視覚情報をプロジェクションとして提示することで,塗布時のイメージ形成を支援できるのではないかと考えた.
本研究では,セルフネイル施術を対象とし,爪上に単純な線情報を投影する支援手法を提案する.提示する情報として,格子柄,縦縞柄,横縞柄の3種類の線パターンを用い,線の太さおよび線の密度を可変とした.これらのパラメータを利用者自身が調整可能とすることで,指や作業内容に応じた適切な補助情報を検討できる実験用システムを構築した.システムはProcessingを用いて実装し,プロジェクターによって爪上へ直接プロジェクションを行う構成とした.
提案手法の有効性を検討するため,セルフネイル未経験の20代女性3名を対象とした実験を実施した.実験では,左右10本の指それぞれについて,ベース塗布および模様描画の2種類のネイル塗布動作を想定し,合計20回の調整を行った.実験参加者には,プロジェクションを行いながらブラシを用いた塗布動作を行ってもらい,指1本ごとに適切と感じる線パターン,線の太さ,線の密度を調整・選択してもらった.また,実験後には主観評価として,作業のしやすさやイメージのしやすさに関するコメントを収集した.
実験の結果,ベース塗布では爪全体の範囲を把握しやすい格子柄が多く選択される傾向が見られた一方で,模様描画では縦縞柄や横縞柄といった方向性を持つ線パターンが選択される傾向が確認された.また,指の大きさや形状によっても,適切と感じる線の太さや密度に違いが生じることが示された.主観評価からは,塗布中はブラシによって線が隠れるものの,塗布直前まで爪上に線情報が提示されていることで,「どこにどのように塗るか」を事前にイメージしやすくなるという意見が多く得られた.
以上の結果から,プロジェクションによる単純な線情報提示であっても,セルフネイル施術における視覚的イメージ形成を支援できる可能性が示された.本研究は,ネイル施術という具体的な応用を通じて,細かな手作業を伴う作業に対するプロジェクション支援の有効性を示すものであり,今後の作業支援システム設計に対する基礎的知見を与えると考えられる.