社会情報学部情報デザイン専攻の松田ゼミでは、2018年9月19日、地域連携プロジェクトの一環として多摩市立唐木田児童館と協力したイベントを実施しました。プロジェクトのテーマは「地域の子どもたちが体を動かして仲間と遊べるロボット中心の遊び環境づくり支援」で、児童館の子供達が楽しめるようなイベントをヒューマノイドロボット「ペッパー」を中心に行いました。

1. 地域活性化と人工知能・ロボットの活用

子どもの成長環境において「遊び」は重要な役割を果たしていますが、近年の子どもたちは少子高齢化社会やポータブルゲーム機の普及などにより多人数や多学年に渡る友だちと一緒に遊ぶ機会が年々減少しています。また社会的には、そういった人間的活動に対して人工知能やロボットといった先端技術を活用することが求められてきています。そこで本プロジェクトでは、地域の児童たちが集まりロボットを中心として多人数で身体を動かして遊べる環境を提供することで、地域児童や保護者、児童館、松田ゼミなどが連携した地域活性化を目指しています。

本プロジェクトでは、いかに児童らにロボットを受け入れられるかに重点を置き、ロボットを人間らしく親しみやすいと感じ、普段はあまり運動しないゲーム好きの子でも進んで参加したくなるようなイベントとして、3台のペッパーを中心とした全員参加型のクイズ大会を行いました。

児童館には図1のようなポスターと告知用の広報誌を作成していただき、事前の申し込み受付や参加人数の把握などを行っていただきました。
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図1 児童館の広報誌(左)とポスター(右)

2. ペッパークイズ大会開催に向けた準備

イベント開催までの準備期間には、児童館の三枝館長にアドバイスとご協力をいただきながら、打ち合わせやリハーサルなどを進めてきました。松田ゼミでは今までにも唐木田児童館と協力したイベントを行ってきています。2015年にはペッパーの「ようかい体操」、2017年にはクイズ大会の開催し大変好評でした。2017年のクイズ大会が1台のペッパーが進行していたのに対して、今回のクイズ大会は3台のペッパーがお互いに協調しながら進行していくというシステムでした(図2)。

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図2 ペッパー3台のリハーサル

3 唐木田児童館でのイベント実施

今回は40名の児童が参加してくれました。イベント当日は、最初に児童らに対して松田ゼミの紹介、ロボットについての講演(外部講師)を行いました(図3)。講演の内容は、ペッパーを含めたロボット全般が活躍している分野の紹介や、ロボットが児童らの生活にとってこれから欠かせない身近な存在でなっていくというものでした。
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図3 松田ゼミの研究紹介とロボットについての講演

その後、児童らに対してペッパー3台による全員参加型クイズイベントを実施しました。全体の流れは、ペッパーがクイズ問題を発話してカウントダウンを行い、その間に児童らが選択肢を表示している2台のペッパーのエリアに移動する形式で(図4左)、正解した児童には学生らが正解シールを配布しました。正解発表では、正解した児童らがとても喜んでいました(図4右)。

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図4 全員参加型ペッパークイズ大会の様子

クイズ問題は全部で5題出題し、発話と正解発表、児童らの移動やシール貼りなども合わせて全体では約30分掛かりました。クイズ終了後には質問タイムを設け、アンケート配布し記入してもらいました。

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図5 質問タイムとアンケート

3. アンケートの結果

アンケートの結果の一部を図6と図7に示します。ペッパー1台で進行した前年度のクイズイベントの結果を水色、ペッパー3台の協調によって進行した今年度の結果を赤色の棒グラフで示しています。これらを比べると、学年分布は前年度は低学年が多めでしたが今年度は高学年が増えています。また、男女比は前年度同様およそ2対1でした。

(c)のクイズ正当数をみると、前回同様3~4問の正解者が多いですが今回は1問しか正解しなかった人は居ませんでした。(d)のように低学年(3年生以下)と高学年(4年生以上)に分けると、前年度は高学年の平均点が相対的に低かったのにくらべ、今年度は学年を通して同程度でした。このことからも、前年度と今年度のクイズ正解数が同程度であるとみなして比較できることがわかりました。
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図6 アンケート結果1
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図7 アンケート結果2

図7右はイベント全体の評価結果です。前年度は「楽しくなかった」と回答した参加者が1名(2年女子)おり標準偏差が大きくなっていました(SD=0.9)。また、今年度は「楽しくなかった」と回答した児童は居ませんでした。割合的にはイベントを楽しかったと回答した参加者が97%以上で、前年度の85%よりも増加しました。
これらのアンケート結果から、複数のロボットが進行するイベントであっても児童らがイベントを楽しむことができたということが分かりました。

4. 最後に

今回の児童館と連携したイベントから、状況判断の部分で人間の介入が必要な箇所も依然としてありますが、複数台のロボットによるイベントの実施が可能であり、人間が行ったイベントと同様に楽しめることが分かりました。また、イベントの運用人数を前年度の3名から1名に減らすことができました。今後の課題は、複数のロボットを用いてイベントをさらに自動化することです。

今回のイベントで、多学年に渡る児童らが全員参加して遊ぶことの楽しさを再認識し、人工知能やロボットといったテクノロジーにも関心を持ってもらえたのではないかと思います。

●参加したゼミ3年生(11名):
小川真輝、加藤彩佳、工藤聖乃、佐々木悠花、中村茉由、村山文香、山下愛加、小川奈々、上倉静恵、河﨑真実、矢野琴子(司会役)