【中野ゼミ】瀬戸内海に浮かぶ直島・豊島のアート旅

DSC_9105

中野ゼミではアートやデザイン、地域の文化に触れることを目的に毎年ゼミ合宿を行っています。2014年夏は香川県の瀬戸内海に浮かぶ直島(なおしま)と豊島(てしま)を訪れました。近年、瀬戸内海は、3年ごとに開催される「瀬戸内国際芸術祭」や美術館の影響で現代アートの聖地として世界に認識されつつあります。今回は残念ながら芸術祭期間ではありませんでしたが、それでもこの小さな離島に国内外から多くの訪問者がいるのには驚きました。

1日目は、高松からフェリーで「直島」を訪れました。安藤忠雄設計の「地中美術館」「ベネッセハウスミュージアム」や、島の人々が暮らす地域に点在する古民家などを改修してアーティスト達が作品化した「家プロジェクト」などを巡ることができました。

2日目の「豊島」では、レンタル自転車(坂が多いので電動!)で島に点在する作品を巡りました。途中、慣れない自転車のため、レンタル屋さんに少しだけ荷台に乗せてもらう…なんていうハプニング(楽しみ)もありました。

DSC_9219

棚田を望む小高い丘にある「豊島美術館」では、どこからともなく水滴が湧き「泉」をつくっては地面を流れて消えていく内藤礼と西沢立衛による作品「母型」を体験しました。ゆっくり流れる時間のなかで自然の微細な変化を感じ取る貴重な体験をすることができました。

印象的だったのは、帰りのフェリーで隣に座った人から豊島の土壌汚染(1975年から16年間もの間に産業廃棄物を不法に投棄する島にされていたという、いわゆる「豊島事件」)について、貴重な話を聞けたことです。今では世界でも指折りのアートリゾート地になったこの小さな美しい島ですが、かつては経済成長による暗い影を落としていました。豊島はいまでも毎日汚染土壌の処理が行われ作業員がフェリーで通っているのです。

豊かな瀬戸内の自然と島の歴史、多くのアートに触れた2日間は、ゼミ生にとって大変貴重な体験になったのではないかと思います。また訪れたい場所になりました。

DSC_9185

 

<ゼミ生の感想>

今回の合宿で様々な作品を観て、今後の糧となる多くのことを感じることができました。直島のベネッセハウスミュージアムに展示されていた、ブルース・ナウマン「100生きて死ね/100 Live and Die」が特に印象に残りました。ブルース・ナウマンについて調べたところ、人間が存在するためには生の対立項である死や不安がなくてはならないという不条理を突き詰めるアーティストであると述べられていました。この作品も様々な言葉がLIVEと DIEの対のかたちで100つづられていて、それがよく表れているように感じました。使われているものはネオン管灯ですが、作品を観た時間帯的にも明るく、広々としたコンクリートの無機質な空間に展示されていたので、それがより作品を俯瞰して観させてくれているように感じ、とても好きな空間でした。その空間だけでなくタイトルにも惹かれました。死ねという言葉を使うことや作品の雰囲気などに、一般的に使われる綺麗とはまた別の美しさを感じます。タイトルを見てから正面の椅子に座って作品を眺めているとき、小劇場演劇を観た後の、強烈な何かが確かに残っているけれどふわふわとした感覚と同じような気持ちでした。小劇場演劇も一般的な「綺麗」では決してないけれど、それが描く生や死、不条理さにはどこか人の美しさがあります。その美しさを、小場演劇ではないもので初めて感じられたので、この「100生きて死ね」という作品は私にとって大切なものとなりました。 他にも様々な作品を観てそれぞれに違った感情を持ち、今まであまり関心を持っていなかったアートというものに興味が湧きました。この約二日間は私にとって本当に濃いものでした。今後も様々な方向に興味の幅を広げていけたらと思います。(S.U.)

brucenauman
ベネッセハウスミュージアム「100生きて死ね/100 Live and Die」(ブルース・ナウマン)

 

<ゼミ生の感想>

今回のゼミ合宿で一番印象に残っているのは豊島美術館の「母型」です。外壁はコンクリートでできていて、内部は二ヶ所の開口部があり、床の所々からは水が湧き出しています。たったこれだけなのですが、入った瞬間から空気が違うような気さえしました。開口部からは、光や音が取り込まれ、静寂の中で島の自然の音が響き、湧き出している水は、本当に生きているかのように姿を変えて流れて行きます。偶然だと思いますが、開口部から光が漏れて照らされている中で、ヒラヒラと蝶が舞っているのがとても印象的に残っています。時間の流れを感じさせず、日常の生活から離別したようで自然と同調している、不思議だがどこか安心する本当に穏やかな時を過ごすことができました。まさに母型と言うタイトルがピッタリだと思います。時間があれば、寝転んでずっとここに留まりたかったです。また、この作品は、思い思いに好きなように鑑賞している人や、島の自然、すべてが融合して一つの形になっているのだと全身で体感することができました。たくさんの作品を見て回る今まで訪れた美術館とは違い、作品を全身で感じることができる、いい意味で今まで訪れたことのない美術館でした。(S.F.)

teshimatopDSC_9216
豊島美術館「母型」(アーティスト・内藤礼+建築家・西沢立衛)