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2023年11月11日(土)に東京ビッグサイトで開催された「東京国際プロジェクションマッピングアワード Vol.8」において、社会情報学部情報デザイン専攻の学生9名(チーム名:三色団子)による作品「Imagine」が、ビッグサイト賞を受賞しました!

ビッグサイト賞では、最優秀賞、優秀賞、審査員特別賞などと共に来年1年間、東京ビッグサイトで作品を上映していただけるそうです。今年のテーマは「OPEN」で、全31作品が東京ビッグサイトの壁面を彩りました。

チーム・三色団子は、コンピュータを介した図的アプローチをテーマに、Graphic mindの発達を大切にしながらさまざまな取り組みを行っている情報デザイン専攻の堤研究室の3年ゼミ生で、本年6月26日に書類審査を通過してから今月の上映会に臨むまでの約4カ月間、授業後に実習室に集まっては企画段階から仕上げまで相互に議論しながら作品を作成してきました。

作品は、【日常を支配する「当たり前の価値観」が異形の者たちとの遭遇という未経験な状況と対峙する中でリセットされた主人公が、新たに芽生えた感情によって彼らを受容、共感を覚えるようになり、感応しあって、共に戻ってきたビッグサイトで大きな力となって空に解き放たれていく】という内容です。

自らのイメージを膨らませ、他者の意見も取り入れながら情景のアイディアを整理していく作業は、そしてそれらに具体的な形を与え、東京ビッグサイトの壁面というデザインされた形にはめ込んでいくという作業は、今回のテーマにも通じる、日常ではなかなか得られない体験だったのではないでしょうか。お疲れさまでした。(文責:堤)

 

●ビッグサイト賞受賞作品 『Imagine』

チーム名:三色団子(大妻女子大学)
https://pmaward.jp/vol-8screenings/imagine/

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●制作した学生の感想

5月からアワードに関する話し合いを始めて10月末に提出というスケジュールの中で、企画書の提出、ビデオコンテの提出、中間提出など期限に追われながらも限られた時間の中でより良いものを作ろうと奮闘しました。 アワードから指定のあったテーマ、自分たちで決めたコンセプト、技術力、そして時間。これらを両立し一本筋の通った作品にすることは容易ではなく、「楽しそう」や「おもしろい」が先行してしまって“作品を通して伝えたいこと”を見失ってしまうこともありました。しかし話し合いを重ねることで、面白そうな提案もテーマに沿った意見も取り入れ自分たちで納得できるような案を一つの企画案にまとめることができました。
4月に「初めまして」と出会った9人でも短期間で相反する意見を一つにまとめ、納得のいく作品を作ることができたという成功体験は私たちの人生において素晴らしい経験となりました。(Y.K.)

最初は皆緊張していましたし、ある程度経ってもやや話しづらい雰囲気がありましたが、誰かが話始めるとみんな意見を出しやすくなるので、積極的に自分が意見を言う大切さを知りました。制作では計画変更も往々にしてありますので、日毎にバックアップを保存しておくことがとても大切と知りました。(M.Y.)

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ペーパークラフト風モデルで異世界感を強調した

私は「蝶象」を担当しました。生き物を作る際に一番時間が掛かったのはボーンを動かすことでした。身体の作りや、骨や筋肉の構造など、動物について調べて作っても思った通りには動いてくれず、部位ごとに何度も作り直しました。その後も歩き方っや空の飛び方など、実際の動画を繰り返し観ながら作品に反映させることでよりリアルな動きになるように調整しました。作り直すたびに完成度が高くなり、作業へのモチベーションはどんどん上がっていきました。(S.R.)

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左:7月の段階の蝶象 右:9月の段階の象蝶

主に絵コンテと海の「シャチ孔雀」の制作を担当しました。企画案出しはかなり難航しました。コンセプトや感情の流れなど内容を詰めて具体的に仕上げていくことはとても大変で、繰返し顔を突き合わせて話し合いました。それでもあの頃の案が今回の作品「imagine」にしっかり収まったのは、本当にすごいと思います。ゼミ生の仲も深まりました。
シャチ孔雀の制作では、アニメーションの場面ごとに別モデルを用意しました。とくにやわらかさの表現が必要な羽に適切なボーンを入れるのが難しかったです。(S.K.)

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ボーン設定に苦労したシャチ孔雀

自分の担当部位「宇宙」のメンバーは3人でしたが、各自が各々の得意分野で作業できたのは良かったと思います。目の前のPC画面での映像だけでなく、実際に投影した時を想像して制作するのがとても難しかったです。映像の縁に枠を作って画面外に飛び出しているかのように見せたりすることが、プロジェクションマッピングらしくて気に入りました。この作業を通じて、グループ作品では迷惑をかけないように期限を守ったり、たくさん話し合いを重ねて方向性を同じにすることが大切だと感じました。 (I.M.)

グループでは、まず意見をまとめるのに工夫が要りました。各人の面白いアイディアも実現できるよう、基本軸は守ったまま軌道修正することも度々で、必然、そぎ落とさなければならない箇所も出てくるので取捨選択に気を遣いました。しかし、メンバーとの交流は楽しくて居心地の良いものでした。時間をかけた分だけ、達成感もあって充実した日々を過ごせたと思います。
作業では、「ウサギカエル」という異形の生き物を担当しました。頭がウサギで首から下はカエルという何とも奇妙な姿をしているので、愛嬌のある見た目っを目指してモデリングしました。(S.M.)

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左:ボーンを入れた状態 中:レンダリング結果 右:アニメーションの付与

グループでは、コミュニケーションがうまく取れずに違った解釈で進んでしまう事もあって難しいなと思いました。その中で、全員でしっかり話し合う時間を取ることがより大切であると学びました。
作業では異形の「猫へび」を作りました。実在しない生き物は、モデリングもアニメーションも難しかったです。しかしその都度、よく考えながら調整を進めました。(O.M.)

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左:猫へびの頭部のモデリング 中:仮マテリアル付与後 右:最終結果

途中経過の映像と完成した映像を見た時の心境が全く異なった自分に驚きました。始めは、一つ一つのオブジェクトは完成度が高くても、全体を通してみたときの効果音がシーンに適応していなかったり、個々のシーンが一貫性を持っていなかったりと課題点がある状況で、心を動かすものはあまり感じられませんでした。しかし、完成した映像を投影して見たときは、個々のシーンが手を繋いでいるようにして動き、奥行きもより感じられ、迫力が生まれ胸が高まる作品となりました。プロジェクションマッピングとは、投影する建造物と私たちの思いが重なったときに深い感動をもたらす表現方法だと感じました。(Y.Y.)

他のメンバーの頑張りに自分も引っ張られて「必ず成功させるために頑張ろう」という意識が芽生えました。全員の前向きな気持ちが、よりイメージに近い作品を創り上げたのだと思います。またソフトウエアに慣れることも重要ですが、それ以前に「長期的にこの技術を使用できるように様々な方法で習得していこう」という気概を持ち続けることが重要であることがわかりました。これからも、未知の技術に対し、この姿勢で取り組めるように頑張りたいです。(H.Y.)

なお、詳細な情報や過去の大妻女子大学からの参加作品は以下のページに記載されています。ぜひ、一緒にご覧ください。

 

〇東京国際プロジェクションマッピングアワード実行委員会
「東京国際プロジェクションマッピングアワードとは?」
https://pmaward.jp/news/projectionmapping8/

〇情報デザイン専攻公式ページ
「堤ゼミとプロジェクションマッピングアワード」
https://www.sis.otsuma.ac.jp/i-design/?p=3624

2023年11月7日

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1.ゼミ生が作品制作を通じて得たもの

 堤ゼミは、社会情報学部が設置された1992年入学の一期生からずーっと開講されてきたゼミナールで、コンピュータを介した図的アプローチを主題に、Graphic mindの発達を大切にしながらさまざまな取り組みを行ってきました。コンピュータグラフィックスやさまざまなデバイスを取り込んで、興味ある現象や教材、課題を解き、錯視やゲームにも挑戦してきました。

 2016年には、当時第1回コンテストが開催された東京国際プロジェクションマッピングアワードに3年ゼミ生が初参戦し、以後8年間第一次審査を通過して東京ビッグサイトでの上映・審査会に出場してきました。作品制作の要となるコンピュータグラフィックスの受講開始時期は参加タイミングに重なってしまいますが、初夏の企画提出段階(6月中旬)では、いろいろ調べ、考え、議論して企画案を練っていきます。その頃のゼミ生はそれこそ一人一人が個々に意欲的な分、まとまりがつきにくく教員もハラハラしながら見守っていますが、学生はわいわいがやがやマインドマップを作成しながら、やがて仲間の考えを理解するようになります。

 3DCGなどの表現技術の力はまだ低くても、今後、職場や仲間内においても大事なアイデア出しや発想力を社会とのかかわりを持つアワード参加の場で訓練して高めていく様子は、ゼミの行為としても効果的だといつも感じています。

 第一次審査通過後は、制作に向けて個人個人のスケジュール調整が始まります。3年生では専門科目の授業がほとんどになるため、なかなか大学での制作時間が取れませんが、私の指導の肝は、「何を教えるか」ではなく、「できる限り顔を突き合わせて話し合わせる」こと。そこで、夏休み後半から10月にもなると毎晩22時(大学のコンピューターが自動的にシャットダウンされる)まで実習室で共同作業。いわゆる放課後の作業が連日続くわけですが、それでも提出を終えて2,3日も経つと、ゼミ生曰く『なんだか、あの時間が懐かしい気がする!』

 そして、毎年、学生の3DCGスキルは期間中に格段に進歩しており、ちょっと助言をしただけで、数時間すると『作り直しました。』。しかも意図を十分に組んでくれています。いつも繰り返しと実践が大事だと感じる瞬間です。

 

2.過去(2016年から2021年)の参加作品とその概要

vol1Vol.1参加作品:「Starting over」

 人体に由来しない尺度によって、人間と建物との調和と秩序が埋もれつつある世界を危惧した“もじゅろう”(モデュロールに由来)が地球に乗り込むが・・・。

 

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Vol.2参加作品:「Come on -四季の世界-」

 四季ごとの情景の変化や日常生活の潤いを日本独特の紋章、『家紋』のデザインを通して表現しました。

 

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Vol.3参加作品:「祭・踊・祈」:大会テーマ【JAPAN】

 祭りの中で行われる“踊り”や“祈り”を東京ビッグサイトの壁面に彩ることで、“踊り”が生み出す生命力に満ちた躍動感や一体感、“祈り”の表現として用いられる光の温かさや幻想的な景色を表現しました。

 

vol4
Vol.4参加作品:「ある時はしなやかに、ある時は力強く」:大会テーマ【
調和/スポーツ

 火焔土器は「燃え上がる炎」を象っています。その見た目は力強さの造形美・燃え上がるスポーツ選手の闘志そのもの。日本古来からの技法である墨絵でダイナミックなストロークとアスリートのフォルム、ダイナミックで俊敏な動きや、しなやかで美しい動きを描きました。

 

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Vol.5参加作品:「共栄共存」:大会テーマ【
CONNECT with

一見、不自由にも見える生きものたちが、逆に、今の人間では失われてしまった能力を発揮して繋がりあい、人間が壊してしまった環境に一度は自らも破壊されながら再生していく様を、闇と光の対比によって表現しています。

 

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Vol.6参加作品:「Re:Earth」:大会テーマ【
新しい時代/New Era

私たちは、生物の生態系や自然環境を破壊しつつあります。この現状に目を向けて、手遅れにならないうちにケアしなければならない時代に来ています。作品の中では、これまでの人間の行動を表しつつ、受け身の態度を捨ててロボット技術やIOTを駆使して能動的に取り組む姿を表現しました。

 

3.2022年Vol.7参加作品の概要とゼミ生の感想

  昨年11月19日(土)に東京ビッグサイトで行われた「プロジェクションマッピングアワードVol.7」では一昨年に引き続き同アワードに唯一の女子大学チームとして出場しました。大会テーマである「Enjoy!!!」を受けて、女子大生ならではの可愛さに基づいた「Enjoy!!!」を表現することを目ざして、約半年間制作を続けました。ビッグサイトの特徴でもある逆三角形の壁面だからこその演出や、奥行き感を出すことを特に意識しました。この作品を見てくださった人が、身の回りにあるちょっとした「Enjoy!!!」に気づくきっかけとなったら嬉しいです。当大会では全国から勝ち抜いた14チームの作品が投影されました。3年ぶりの有観客+オンライン配信での実施となったVol.7ですが、現地には7,497人が来場、オンラインではのべ303,936人が視聴したそうです。(代表者)

 

 

  • 作品概要

 

Vol.7参加作品:「POPPING GIRL」:大会テーマ【ENJOY!!!

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図 Vol.7参加作品:「POPPING GIRL」のイメージ・ビジュアル

 

私たちは、テーマの「ENJOY!!!」というワードを目にしたとき、“弾ける感覚” が漠然と頭に浮かびました。その感覚は、同時に“かわいい” ものでもあり、それは 21年間生きてきた中で目にしたもの、体験したもので表現できることに気がつきました。

この作品を通して、これまでとこれからの人生の弾けるような輝きと彩りと、避けては通れない壁という少しのスパイスを詰め込んだ最大限の「ENJOY!!!」を。幼いころに夢見たこと、輝いた青春、挫けそうなときに心のよりどころになってくれるもの、そして、これからの未来、そんな「ENJOY!!!」を私たちなりの表現で伝えていきたいと思います。

 

 

  • Vol.7アワードに参加したゼミ生(2022年度、3年ゼミ生)の感想

 

仲間と切磋琢磨してプロジェクションマッピング作品を作り上げるというとても貴重な体験ができ、コロナ禍でなかなか通学することが出来なかった大学生活で、最高の思い出を作ることが出来ました。(H.S.)

CGの講義で学ぶことに加えて常に自分達で調べて試行錯誤を繰り返すことで作品として形にしていきました。コロナ禍と共に始まった大学生活でしたが、堤先生を含めゼミのメンバーと切磋琢磨して取り組んだ半年間は忘れることのない貴重な経験です。(M.S.)

全員が右も左もわからず不安もありましたが、逆に未経験だからこそ、すべてが学びになったり、壁にぶつかったときも堤先生のご指導のもとチームで一丸となって打破したり、自分たちの強みを生かして今年のテーマである「Enjoy!!!」を体感しながら制作することができました。(H.A.)

今回の大会は、学生生活の中で1番の思い出となりました。制作過程は初めての経験ばかりで苦戦することも多々ありましたが、完成した作品を見たときにとても感動したことが印象に残っています。(M.I.)

プロジェクションマッピングに参加するにあたって、今まで触ったことのないソフトや機材に触れることができてとても勉強になりました。賞はとることができなかったけれど、貴重な経験ができたと思います。(U.I.)

チームで1つのことに取り組んだ経験はあまりありませんでしたが、同じ目標に向かって頑張る仲間がいることで熱意に感化されることもあり、1人でやるよりも何倍も達成感がありました。 (M.M.)

 制作時は難しい作業が多く大変だったけど、同じゼミのメンバーと協力しながら考えて取り組むのは楽しく、充実感がありました。投影された作品を見た時は色や動きがとてもきれいに映っており、感動しました。(S.H.)

 プロジェクションマッピングの映像制作は、3DCGや動画編集など初めて挑戦することがたくさんあったためハプニングなどが度々起きましたが、チームのメンバーやリーダーなどの助けにより無事完成することができました。貴重な体験ができてよかったです。(K.M.)

 プロジェクションマッピングを制作するという初めての挑戦でありながらコンテストに出場させていただき、大変なことも多くありましたが、みんなで楽しく制作できたと思っています。とても貴重な経験となり、大学生活の大切な思い出の一つとなりました。(E.S.)

 CGを用いた映像制作を行うのは初めてでしたが、ゼミのメンバーたちと試行錯誤しながら作業を行い、とても良い作品を作ることができました。コロナ渦でなかなか大学での思い出を作ることができなかったため、今回のアワードが大学生活の中で1番の思い出になりました。(R.O.)

 

 

  • 大会当日の記録写真

 


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(会場正面写真:© 東京国際プロジェクションマッピングアワード実行委員会)

公式サイト:https://pmaward.jp/

 

4. Vol.8アワード(2023年)へ

 11月に東京ビッグサイトで東京国際プロジェクションマッピングアワード Vol.8が開催されます。与えられたテーマは「open」。今年も3年ゼミ生が書類審査を通過しており、猛暑もいとわず大学に集合して作品制作を行ってすでに提出しました。

参加決定直後には、昨年アワードを体験した現4年ゼミ生3名が3年生のゼミ時間に経験談と助言を伝えるなど、活発なゼミ内交流もできました。今回の作品“Imagine”は、日常を支配する「当たり前の価値観」が、未経験な状況と対峙する中でリセットされ、新たに芽生えた感情によって異形の者共にも徐々に受容と共感を示し、最後には己の内面まで解き放たれていくという物語です。

11月11日にはVol.8上映会が開催予定で、全員で楽しみにしています。

 

本専攻2年生の鈴木優初さん(松田ゼミ)が、東京電力ホールディングスの主催する、応募対象を限定しない(学生限定ではない)アイデアコンテスト (賞金総額300万円)に応募し、約200件の応募の中から10件のファイナリストに選ばれました。3/20の社会人を交えた本選が期待されます。

以下、鈴木さんからの入選報告です(本選前なので応募内容に関しては割愛してあります)。

1. 応募のきっかけ

元々コンテストに入賞したいという思いが強くあり、松田ゼミに配属が決まり、先生からの勧めもあり絶対何かコンテストに応募しようと考えていました。ちょうど松田先生が担当されていた「情報処理機器概論」の授業で、情報処理機器を用いたアイディアを考えプレゼンを行うという課題があり、そのアイディアを元に自分でコンテストを探して先生に相談し応募しました。最初は、このコンテストはアイディアの説明においても顧客価値や実現可能性、金銭面についても述べなければならなかったため、自分には難しそうと少し諦めかけていたのですが、先生から「とりあえずやってみなよ」との一言で勇気づけられました。

2. コンテストの概要

本コンテストは東京電力ホールディングスが主催し「あなたがデザインする都市、インフラ、生活におけるTEPCOの次世代サービス」を募集するものです。

応募するサービスに求める方向性として、(1)「実現可能で将来的に大きな市場(数百億円程度)が期待できること」、(2)「顧客価値を具体的に考えていること」、(3)「テクノロジーを活用していること」、(4)「電力会社としての親和性があること」、「具体性の高い提案であること」があげられており、[1]「電気に関連したサービス」、[2]「東京電力が持つリソースを活用したサービス」、[3]「電力会社として強みや意義があるサービス」という条件がありました。自分が考えたアイディアがどのような人をターゲットとし、どのような価値があるのか、実現方法、金額的な面も考え文章にまとめ、実現イメージの画像なども数枚提出しました。

3. 選考までにやったこと

アイディア企画のコンテストに応募することは今回初めての経験であり、最初はコンセプトの説明など何をどうまとめれば良いか全然分からず、松田先生に一回目に見せたコンセプトの説明の文章はとても沢山のご指摘をいただきました。今まで学校でアイディアを考える時間はあったとしても、自分が考えたアイディアのビジネス面についてまでは考えたことがなく、どのくらいの金額なら高い市場を得られるのか、どのくらいの品質があれば売れるのかなど先生からのアドバイスを沢山いただいてまとめたすえ、審査を通過することができました。次は、主催企業の方々の前でのプレゼンテーションとなります。松田先生からはこれまでも沢山アドバイスをいただき、何かで落ち込んだ時もとても前向きな言葉で励ましてくださいました。なので、沢山お世話になった先生の期待に応えられるよう全力で最終選考に挑みたいと思います!

12月14日、京セラコミュニケーションステム株式会社(KCCS)主催の「Sigfoxを使ったIoTアイデアコンテスト」の本選において社会情報学部情報デザイン専攻3年の山川祐美 さん(松田ゼミ)がプロトタイプ部門で「優秀賞(副賞10万円)」と「オーディエンス賞」の2賞を受賞しました。オーディエンス賞は会場で発表とデモを見た人が最もよいプレゼンテーションを選ぶ賞です。発表スライドはこここです。
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このコンテストは、KCCSが提供するIoTネットワーク「Sigfox」を活用した、生活を楽しく、便利で、快適にするアイデアを学生から募集したもので、Sigfoxの活用アイデアを競う「アイデア部門」と、プロトタイプを開発して本選でデモンストレーションを披露する「プロトタイプ部門」の2部門から成ります。各部門、最優秀賞1件、優秀賞2件です。
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本選は、53件の応募からアイデア部門8件、プロトタイプ部門6件がファイナリストとして選ばれ、KCCSの新宿オフィスで発表を行いました。今回、受賞したテーマは、Sigfoxで離れた家族同士を緩やかにつなげるというもので、プレゼンの内容に加え、その場で会場と友人の家をビデオ通話でつないだリアルタイムデモが高く評価されました。プロトタイプは、PythonとArduinoで開発しました。またここで得た技術的な知見をQiitaにも投稿しました。

<松田ゼミ-21 前へ>

社会情報学部情報デザイン専攻の松田ゼミではヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)の研究を行っています。HCIとは、人の心理的身体的特性、コンピュータ技術、社会環境などの関係を複合的に扱い、人がコンピュータをよりよく利用するためにはどのようなデザインが望ましいかを研究する分野です。

(1)「Sigfoxを使ったIoTアイデアコンテスト」のファイナリストに選出

松田ゼミ3年の 山川祐美さんが、京セラコミュニケーションシステム株式会社の主催する、「Sigfoxを使ったIoTアイデアコンテスト」(優勝賞金50万円)応募し、プロトタイプ作成部部門で書類審査を通過し、ファイナリストに選ばれ、本選への出場が決定しました。本コンテストは、IoTネットワーク「Sigfox」を活用した、生活を「楽しく」「便利で」「快適に」するアイデアを募集するコンテストです。本選は12月に行われ、そこでは実際にSigfoxなどを用いて、提出したアイデアをソフトウエアで実現しデモ、発表します。昨年度の同コンテストでは70の応募があり、ファイナリストは10名でした。現在、12月の本選に向けて、デモ開発のためにSigfoxなどのIoTのプログラミングを学んでいます

(2)「オージス総研ソフトウェアコンテスト」に4件(6名)が1次審査通過

オージス総研が主催するソフトウェアコンテスト「焦らないソフトウェアコンテスト」(優勝賞金50万円)の第1次審査に松田ゼミ3年の、栗山真優子、宮ひかる、石井柚歩、山口菜友、矢吹真菜、山川祐美さんの6名が通りました。本コンテストは「焦らないソフトウエア」に関連するソフトウェア(ITシステム)のユニークで革新的なアイデアを募集するコンテストです。次に2次審査があり、11月に本選になります。現在、6名は2次審査に向けて、1次審査に提出したアイデアをブラッシュアップしています。

いずれも、ゼミ生が自分で考え応募したものです。今後が期待されます。

 

昨年度卒業した松田ゼミ生(平野愛理、PFU所属)が、情報処理学会全国大会で発表した卒業研究の内容をさらに深め、「ヒューマノイド型ロボットを用いた褒める行為に着目した学習支援システムの試作と評価」という内容で、情報処理学会のコンピュータと教育研究会(148回研究発表会)で発表してきました。

開催場所は日本大学文理学部、参加者は35名程度、発表時間は20分、質疑は10分です。

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発表後、以下のような活発な議論がなされ、質疑時間が足りないくらいでした。

1. Pepperの3次元的な褒める動作と二次元の映像の褒める動作の影響の違いは何か?
2. ロボットが褒める利点、立体的なロボットが褒めると良いのか?
3. 今後の課題の長期評価におけるPepperの褒める動作の変化はどのようなものを考えているか?
4. 褒める動作を少し変えるくらいでは学習者の飽きを止めることはできないと思うがそこはどう考えているか?
5. 変なホテルはロボットを導入したが、最近はロボット以外で展開している。どう考えるか?

また、発表後、本研究と同じ方向性を持つ研究を行おうとしている筑波大学の大学院生と1時間弱ほど意見交換をし、議論を深めました。

報告者: 山下愛加(松田ゼミ 3年)

公共交通オープンデータ協議会が主催する「東京公共交通オープンデータチャレンジ」に応募し、東京地下鉄特別賞を受賞したので報告します。

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  1. 応募のきっかけ
    今回のコンテストの応募は、ゼミを通して、松田先生からこのコンテストを教えて頂いたことがきっかけです。コンテストを知ってから、公共交通オープンデータ協議会が、「東京」の公共交通を誰もがスムーズに乗りこなせるようにすることを目指し、公共交通関連データのオープン化を進めていることを知りました。私は、企画することに興味がありましたが、何より社会に出ると、公共交通オープンデータ協議会のように「誰かのために何かを考えること」はとても大切なことでやりがいも感じられると思ったので、応募することにしました。
  1. コンテストの内容と開催概要
    東京公共交通オープンデータチャレンジは、首都圏の様々な公共交通機関のデータを公開し、「東京」を応援するアプリケーションやアイデアの募集するコンテストでした。アプリケーション部門とアイデア部門がありましたが、私は、公共交通オープンデータを活用した新しいアプリケーション、サービス、ビジネス等のアイデアを募集する「アイデア部門」に応募しました。主催: 公共交通オープンデータ協議会
    共催: INIAD cHUB(東洋大学情報連携学部 学術実業連携機構)、東京大学大学院情報学環ユビキタス情報社会基盤研究センター、CPaaS.ioプロジェクト
    特別協力: 東京地下鉄株式会社、東京都交通局、東日本旅客鉄道株式会社
    協力: 小田急電鉄株式会社/京王電鉄株式会社/京成電鉄株式会社/京浜急行電鉄株式会社/ 西武鉄道株式会社/東京急行電鉄株式会社/東京臨海高速鉄道株式会社/ 東武鉄道株式会社/株式会社ゆりかもめ/小田急バス株式会社/関東バス株式会社/ 京王電鉄バス株式会社/ジェイアールバス関東株式会社/西武バス株式会社/ 東急バス株式会社/西東京バス株式会社/全日本空輸株式会社/ 東京国際空港ターミナル株式会社/成田国際空港株式会社
    オープンデータ・パートナー 一般社団法人オープン&ビッグデータ活用・地方創生推進機構(VLED)、国土地理院、気象庁、文化庁、公益社団法人 全国公立文化施設協会
    後援: 内閣官房IT総合戦略本部、総務省、国土交通省、東京都、気象ビジネス推進コンソーシアム
  1. 応募内容

・応募タイトル:「各駅の魅力を知ることが出来る電車内窓ビジョン広告」

・応募作品の説明: 現在、電車は日本を代表する交通機関の一つです。多くの人が利用する交通機関だからこそ電車は非常に効果の高い広告媒体ですが、現在はポスターなどの静的広告が多く、動きによって宣伝効果を高める動的広告は数が少ないのが現状です(図1-1)。また、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックでは、世界中から色々な国籍、年齢、職業、身体特性を持つ方が、東京を訪れるために電車を利用します。そこで、「東京の駅の魅力を知ってもらうこと」を目的に、電車の窓を使った「窓ビジョン広告」を提案しました。

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1-1 現在の電車

「窓ビジョン広告」は、図1-2のように電車の走行中に車両の窓全体に、次の駅の人気観光スポット(渋谷のスクランブル交差点など)が写真で前から後ろへ流れるように映し出されます。


1-2 窓ビジョン広告(スクランブル交差点)

写真はInstagram、Twitterなどで募集し、日替わりで投影します。また、通学・通勤者が多い朝の限られた時間帯では、図1-3のようにお店の当日限定クーポンを窓に流し、そのクーポンを写真に撮ってお店で見せることで割引がされます。

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1-3 窓ビジョン広告(お店のクーポン)

本提案により、大画面での投影によって大きなインパクトを与えられるだけでなく(図1-4)、観光や通勤・通学に楽しさも加えられると思います。また、『世界一複雑とも言われる「東京」の公共交通を誰もがスムーズに乗りこなせるようにすること』の手助けをすることが可能になると思います。

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1-4 吊革に捕まった時の目線から見た写真の大きさ

コンテストの経緯は以下の通りです。
2017/12/27 企画することに興味があると、ゼミ面談で松田先生にお話しました。
2018/1~3  松田先生にコンテストを教えてもらい、アイデアを考え始め、アイデアの内容について相談にのってもらいました。
3/13  コンテストへ応募しました。
4/23  メールで入賞結果をいただきました。
5/15  表彰式とレセプションパーティーに出席しました。

  1. 「窓ビジョン広告」に込めた思い
    今回提案した「電車内窓ビジョン広告」は、自分の日々の生活から考えたものです。応募するにあたってアイデアを考えていたある日、私が通学のために利用した電車の中で、電車内は多くの人が乗っていて、色々な人が同じ場所で、それぞれの気分で過ごす特別な空間だと思いました。幸せな気分の人はより楽しく、たとえ辛い気持ちであっても、電車に乗って幸せな気分になれる素敵な広告があるといいなと思い、窓ビジョン広告の考えに至りました。次に降りようとする駅がある時、目的とする駅の魅力ある写真が窓を流れる広告は、きっと誰もを幸せな気分に出来るのではと思います。また、本提案により2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックでは、世界中から多種多様な国籍、年齢、職業、身体特性の方が、東京を訪れるために、多くの人が幸せな気分になれるのではないかと思います。これらの私の思いが伝わってくるような広告として提案が出来ていたらとても嬉しく思います。
  1. 最後に
    今回のコンテストは、私以外の入賞した方々の作品の驚くようなアイデアにとても刺激を受けました。また自分以外の考えを知ることは、とても勉強になりました。途中、自分に自信が持てず不安に思ったこともありましたが、松田先生をはじめとする応援し支えてくださった方々のおかげで、まだまだな私でもここまで進むことが出来ました。これからも様々なことに挑戦し、諦めず頑張っていこうと思います。本当にありがとうございました。

報告者: 植田智恵美(松田ゼミ)

卒業研究として行った「ARを用いた「見て操作する」システムの試作と評価」を、3月15日、早稲田大学で開催された第80回情報処理学会全国大会で発表し、学生奨励賞を頂きましたので報告します。受賞理由は以下です。

  • 家電機器を操作する研究は今後重要である。
  • 実装から評価までをしっかり行っている。
    15210993921760gazeAward

論文はこちらをクリックしてください。

1.情報処理学会に関して

情報処理全般にわたる分野の調査・研究を目的とした学会で、全国大会は情報処理学会が年1回(春季)開催する学会最大のイベントです。大会では最新の学術・技術動向や情報に関する新しい研究成果やアイディア発表を通し意見交換・交流が行われます。

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2.発表内容

今日、電化製品を含む様々な機器がIoT化されつつありますが、機器の操作方法は機能・設置場所に応じ様々です。例えば、天井の蛍光灯の照明はスイッチが操作対象(照明)と離れた場所にあり、どのスイッチがどの照明を制御するか分かりにくい、また、操作対象にスイッチがついている電気スタンドなどでは、手の届く範囲にない場合、スイッチを消しに行く必要があります。

このような不便さを解決する方法として、リモコンがありますが、リモコンは置いた場所を忘れたり、複数個使用していた場合は、電化製品ごとにリモコンを判断して使い分けるという使用上の負荷が生じます。今後、ARの発達に伴いHoloLensのようなカメラ付きのシースルー型の眼鏡の普及が予想される中、本研究では、これまで提案してきた「見て操作する」方式を、ARを用いて開発したシステムを使用して実験を行い、評価しました。

gazeAndControl

本システムは、Processingで開発し、AR用ライブラリとしてNyAR4psgを使用、電化製品の操作にはArduinoに赤外線LEDを搭載して用いました。本システムを起動し、電化製品に付けたマーカを認識するとタブレットの画面にカメラに映った電化製品とその操作ボタンが表示され、それをタッチすることで機器のON・OFF操作ができます。様々な機能の付いた機器では、各機能に対応するコントロールを表示し、制御する機能を持ちます。

gazeSystem

本システムの評価は、20名の本学の学生を対象に、本システムと複数のリモコン、学習リモコンを用い3つの照明器具を制御する実験を行いました。実験では、それぞれの試行における操作時間を計測し、最後に使い易さや操作に関するアンケートを行いました。

実験の結果、3つの器具の操作にかかった平均時間は、本システム(15.2秒)が最も短く、次いでリモコン(16.5秒)、学習リモコン(71.65秒)となりました。

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この結果から、本システムとリモコン、本システムと学習リモコンの操作時間に関してt検定を行ったところ、本システムとリモコンとでは有意差は認められませんでしたが、学習リモコンとでは有意差が認められました。一方、本システムとリモコンとでは有意差が認められなかった原因は、今回の実験ではリモコンを手元に並べた状態でON・OFF操作だけを行ったためと考えられ、様々な種類のリモコンが散在していたり、他の機能を操作する実環境では差が出るものと考えられます。

また、アンケートの結果から、3つの操作方法(本システム、複数のリモコン、学習リモコン)の中で本システムが最も使い易かったと80%が感じており、ユーザー体験としては良好なものであることが分かりました。

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以上より、「見て操作する」方式を使用した本システムは、他の方法と比べ最も早く操作出来た人が多く、アンケートからも被験者に受け入れられる可能性が高いということが分かりました。今後の予定としては、本実験では簡易評価のため視覚的なマーカと赤外線による機器操作を用いましたが、マーカは、赤外線マーカなど目に見えないものに変更、機器の操作もIoT化を前提にネットワーク経由で行えるようにすることなどがあげられます。また、ネットワーク上に機器の状態管理サーバを置くことで、複数の人が同一機器を操作したしたときに機器の状態をUIに反映することが可能となります。

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3.
発表に関して

全国大会当日は、午前の部で発表を行いました。初めての学会発表で、私が参加したセッションの中でもトップバッターだったということもあり、とても緊張しましたが、無事に発表を終えることができました。発表後3人の方から質問、コメントをいただきました。

  • 複数の電化製品のマーカが画面の中にあった場合はどうなるのか?
  • 最終的にはHoloLensのようなHMDで研究をするのか?HoloLensにはこのような研究を行うのに適したライブラリがある。
  • 被験者は学習リモコンを使ったことがあるのか?無い場合は、練習はしたのか?
  • Sonyが出しているタッチパネル型の学習リモコンで評価するとよい

等の質問以外にも、新たなアイディアや知識も得ることができ、とても充実した15分間となりました。

4.終わりに

3年次の後期から本研究を始め、システムの制作で思い通りにいかないこともありましたが、ご指導をいただきました松田晃一教授、非常勤講師の永田雅人先生、実験やアンケートに協力して下さった松田ゼミのメンバーをはじめ多くの方々の協力によって、今回の発表を成功させることができました。発表後、他の大学の方々から面白い研究だったというお言葉をいただき、評価していただけたことを非常に嬉しく思います。また、他の大学の方の研究も聞くことができ、視野を広げることができました。このような素晴らしい経験をさせていただきありがとうございました。この経験は今後の生活の中でも活かしていきたいと思います。

報告者: 平野愛里(松田ゼミ)

卒業研究として行った「 ヒューマノイド型ロボット“Pepper”を用いた学習支援システムの 試作と評価 」を、3月13日に早稲田大学で開催され第80回情報処理学会全国大会で発表してきましたので報告します。論文はここをクリックしてください。

1.情報処理学会に関して

情報処理全般にわたる分野の調査・研究を目的とした学会で、全国大会は情報処理学会が年1回(春季)開催する学会最大のイベントです。大会では最新の学術・技術動向や情報に関する新しい研究成果やアイディア発表を通し意見交換・交流が行われます。

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2.発表内容

近年のヒューマノイド型ロボットの性能は人工知能の発達に伴い著しく向上し、近い将来、このようなロボットが家庭内に家事以外にも勉強を支援するようになると考えられます。従来の勉強法には暗記やリビング学習、スマホ勉強法などがありますが、これらは基本的に、進捗を管理したり、解答の正否が分かるだけのものが多く、単調な学習の繰り返しになりやすかったり、飽きやすく継続しにくいという問題があります。本研究では、学習を褒めるという行為に注目し、家庭内にヒューマノイド型ロボットが居る環境での学習支援に関し、Pepperを用いて開発した学習支援システムを用いた実験・評価をしました。

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本システム開発は、ChoregrapheでPepperのアプリケーションとして開発し、テストと採点システムの開発はHTML5とJavaScriptで行いました。

システムを起動すると、Pepperが挨拶と説明を発話し、テストを胸タブレットに表示します。ユーザは胸部タブレットに表示された問題を解き、解答作業が終了すると結果を表示、Pepperが得点に応じて三次元的な「褒める」動作を行い、応援メッセージを発話します。動作と応援メッセージは得点ごとに異なります。

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本システムの評価は、24名の大学生を対象に12名ずつ2グループに分けてテスト問題を解く実験を行いました。グループAは紙の問題用紙と本システムでPepper、グループBはタブレット端末上のテストシステムとPepperで解いてもらいました。タブレット端末にはPepperで動いているテストシステムと同じものが動いており、音声で褒めるだけな点が異なります。テストは2017年のITパスポートから10問を選び被験者ごとに異なるものを使用しました。どちらのグループもテストの解答から答え合わせまでの時間の計測を行い、テスト終了後、被験者にアンケート(4項目)を実施しました。

テストの解答時間の平均は、タブレットと本システムとでは差があまりなく、紙テストは1分ほど長く、これは答え合わせの時間と考えられます。

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学習の継続性本システムと紙のテストでは75%が本システムの方が継続できそう、本システムとタブレット端末では、88%が本システムの方が継続できそうと回答しました。これは、Pepperが発話を交えて褒める動作が学習者に影響したためと考えられます。

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学習の達成感本システムと紙テストでは、58%が本システム、本システムとタブレット端末では、83%が本システムの方が達成感を感じていたことが分かりました。本システムと紙との差が大きくないのは、従来の解答を紙に書き込むという作業に伴う達成感に起因するものと考えられます。

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問題の解きやすさ本システムと紙テストでは67%が本システムの方が解きやすいと感じ、本システムとタブレット端末では問題の解きやすさは同じでした。これは、紙との比較では、本システムの解答作業がPepperのタブレットをタップするだけで済む簡易さに起因するものと考えられます。

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褒められた感テスト後の声掛けで褒められたと感じたのは70%の人がタブレット端末よりも本システムと回答しました。音声だけのタブレット端末に比べ、人型をしたPepperの褒める動作が、学習者により褒められているという印象を与えたものと考えられます。

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また、自由記述欄からは、「Pepperが出来によって声をかけてくれるので継続しても飽きないと感じた」、「Pepperの動作が人間のように感じ、人に見られている気がして集中できるような気がした」などの意見が得られ、Pepperの身体性が影響していることが分かりました。

3. 発表に関して

全国大会当日は、大会初日の午前の部で発表を行いました。当日までの練習の甲斐あって、とても緊張したものの練習通りに発表することができました。発表後には3人の方から質問、コメントをいただきました。

  • Pepperの行動を分岐させるのは点数で行っているのか?
  • タブレットで動いているシステムはPepperのとどこが異なるのか?
  • 実験には、男子も入れた実験をやってみるとよい。高齢者でやっても面白いかもしれない

4.終わりに

発表では想定していなかった質問もあり、緊張しましたが、何とか回答して無事に発表を終えることが出来ました。今回の学会発表では、他の学生の発表を聞けたり、研究を褒めていただいたり、自分にとってとても良い経験になりました。今回の経験を、これからに生かしていきたいと思います。

報告者: 狩野麗羅(松田ゼミ)

卒業研究として行った「心拍の可視化システムの試作とコミュニケーションに与える影響の評価—図形、光、振動を用いて」を3月13日に早稲田大学で開催され第80回情報処理学会全国大会で発表してきましたので報告します。論文はここをクリックしてください。

1.情報処理学会に関して

情報処理全般にわたる分野の調査・研究を目的とした学会で、全国大会は情報処理学会が年1回(春季)開催する学会最大のイベントです。大会では最新の学術・技術動向や情報に関する新しい研究成果やアイディア発表を通し意見交換・交流が行われます。

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2.発表内容

今日行われている遠隔コミュニケーションは、電話以外にも、SNS、チャット、LINE等を用いたものなど多彩になってきています。また、インターネットの発達により様々な情報を伝えられるようになってきていますが、これらのツールが伝える情報は音声や文字、画像などが主であり、それ以外の対話者の情報はプロフィールや写真等の静的な情報が多いままです。一方で、対話者そのものの動的な情報を伝える遠隔コミュニケーション方法にTV電話がありますが、これは必要以上に情報を伝え過ぎる点で上記のツールに比べて普及していません。

本研究では簡易に対話者の動的な情報を伝える手段として対話者の心拍に注目しました。心拍は人の精神や体の状態がよく現われ、心拍数は気分と関係することが分かっています。本稿では、遠隔コミュニケーションに心拍を、図形のアニメーション、光、振動の3方法で可視化するシステムを導入・評価しました。

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本システムの評価方法は20名の女子大学生を対象に行いました。2 名 1 組で、部屋A、部屋Bに分かれ行い、電話を用い会話内容は指定せずに5分間会話、実験中に会話が心拍と連動していると感じた際にマウスのクリックをお願いしました。最後にアンケートを行いました。

実験の結果、心拍の可視化方法として、分かりやすかった可視化方法は、振動65%、アニメーション30%、光5%となりました。この結果から視覚情報だけでなく振動を聴覚でも感じる事が出来たため振動が一番となったことが分かりました。

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アニメ・光・振動の3つの可視化方法として、どれがコミュニケーションに影響したかの問いに関しては、アニメ、振動が80%と同数となり光が55%となりました。この結果から、アニメ、振動が同じなのは、可視化表示が話題の盛り上がりと連動していると感じられたためという事が分かりました。

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心拍と連動したと感じたクリック回数の総数では、振動>光>アニメの順となりました。振動や光の方がアニメーションよりも会話と連動している印象を与え易いことが分かり。

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理由として、振動や光の方がアニメーションよりも会話を妨げずに情報を取得し易いと考えられます。

本システムを体験し、コミュニケーションに違いが出たかの問いに対して、違いが出たと感じた、少し感じたのは100%となりました。結果から、可視化表示を利用し、積極的にコミュニケーションをとることが分かりました。

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また、自由記述欄からは、「日常生活で会話しているときには相手の心拍は分からないので、それらが可視化されて見ることができ、とても面白かった」、「話の流れによって心拍の変動を見ることが出来て楽しかった」、「話し相手の心拍が可視化されることによって相手の状況が読めるのは単純に面白いと感じた」などの意見が得られ、本体験が「楽しい・面白い」ものと感じていたことが分かりました。

3.発表に関して

全国大会当日は、午後の部で発表を行いました。とても緊張しましたが、当日までに何度も練習を行ってきたので何とか練習通りに発表することができました。発表後3人の方から質問、コメントをいただきました。

  • 人によっては心拍を相手に伝えることを不快に感じるのではないか?
  • 円による可視化は直感的なのか?グラフの方が直感的では?
  • 振動モーターを使ってどのよう遠隔コミュニケーションを考えているのか?

想定していた質問もありましたが、緊張してしまいうまく答えることができず、もっと自分の研究に対して何でも答えられるようにしないといけないということを実感しました。

4.終わりに

3年の秋ごろから研究を本格化し、システムの制作や実験で大変な時期もありましたが無事に発表を終えることができました。発表後、他大の教授から面白い研究だったと仰っていただき、自分の研究を他の学生などに知ってもらうとても良い経験をさせていただきました。この経験を社会でも活かしていきたいと思います。