堤研究室が日本図学会論文賞を受賞しました

堤研究室でゼミの学生と行った共同研究が、2020年度第15回日本図学会論文賞を戴きました。この賞は、日本図学会の学術論文誌に掲載された過去2年分の論文の中から、研究論文として最優秀と判断された論文に対して与えられるものです。論文タイトルはThe Change of Spatial Ability with Age(空間認識力の年齢変化;図学研究第53巻1号)で、ゼミ生(岡田幸乃、奈良輪千里)の他、青山学院大学、大阪電気通信大学、そして東京大学の研究者との共同研究です。

本研究は、これまであまり着目されてこなかった中・高齢者の空間認識力についての調査結果を、小学生から大学生を対象に従来行われてきた調査結果と合わせて分析することにより、空間認識力の年齢変化を明らかにしたものです。

堤研究室では多摩市総合福祉センターのご協力を得て、同センターで同好会の活動を行っている60歳以上の男女被験者(60歳から85歳の男女128名)を対象に、世界的に空間認識力の調査で広く用いられているMCT(Mental Cutting Test:仮想切断面実形視テスト)を実施して分析を行いました。調査の結果、従来得られていた青年層のデータ、あるいは中年齢層のデータとの比較から、一般社会人の空間認識力は男女ともに30歳代にピークがあり、男子では50歳代まで緩やかに低下した後、60歳代では大きく低下することが分かりました。60歳代は 定年年齢にあたることから、仕事からの定年退職の影響なども要因として考えられました。

一方、共著者が調査した、機械設計技術者については50歳代までピーク値を維持しました。このことは,日常的に3次元形状に注意を払うことが,MCTで測られるような空間認識力において高い能力を維持するのに重要な役割を果たしていることを示唆しています。

また、空間認識力には性差があることが知られており、青年層、中年齢層においては男性の平均得点が女性を有意に上回っていましたが、今回の調査で60歳代以上ではこの性差は消滅することも分かりました。

(文責:堤江美子)