環境情報学専攻

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資源の循環を意識しながら
食と環境について考える

食と環境

坂内 久

Hisashi BANNAI

  • 3年生選択科目
  • 月曜3限

世界が抱える食と環境、そして経済の問題を理解するには、社会科学の視点で食の生産・流通・消費・廃棄・再利用について多角的に捉えていく必要があります。本授業では、食と環境に関する、さまざまな事例を紹介しながら、課題解決の糸口を探っていきます。

食と環境1

講義室での授業風景

人間にとって食と環境って?

生きるために不可欠な「食」と
経済活動と対立する「環境」

 人間にとって「食」は生きるため、エネルギー補給のために無くてはならない根源的な欲求です。衣食住の中でも最も必要とされるものです。一方「環境」は、いろんな角度で考えることができます。特に注目すべきなのは、環境が経済活動と対立関係にあるという点です。食と環境を学ぶ上では経済も欠かすことのできないテーマです。私たちがより良く生きていくには食と環境、経済の関係をどう捉えればいいのか、これらの点を探っていきます。

例えば、食品に関して言うと、食べても安全なものと危ないものをどうやって見分ければいいのか、日本とアメリカで許容されている添加物にはどれだけ差があるのかなど、安全な食品に辿り着くための問題意識やスキルを身につけることも一つの目標です。

どんなことを学ぶの?

フードシステムや食の安全性
再生可能エネルギーへの転換など

 食を中心とした生産・加工・商品開発は、生活者の手に渡るまでだけでなく、その後の食品残渣の廃棄・再利用まで考える必要があります。本授業では、食における環境志向型の生産や加工、製品開発、流通、消費の一連のフードシステムについて考察していきます。

具体的には、食の生産や加工、商品開発の基本的な考え方をベースに、安全性への積極的な取り組みとして、リスク分析、食品添加物と安全性、有機農産物や伝統的食品、地理的表示・保護制度による認定食品、ブランド化戦略などを解説していきます。また、これらを踏まえて、資源循環型社会を前提とした食の生産、加工、商品開発、保管・流通のあり方や廃棄物削減、再利用、再生可能エネルギーへの転換などについても考えていきます。

どんなことが身につくの?

物事を見分ける力を身につけ
食と環境への意識を高める

基本的に教科書は使わず、毎回レジュメを配布し、参考文献を適宜指示しながら授業を進めています。たとえば東京都の中央卸売市場で現場の人たちがどのように働いているのか、どのように運営しているかなどはYouTubeを視聴しながら理解を深めるようにしています。普段目にする機会のない競り(せり)の様子なども、動画を見ながら学んでいきます。

食と環境2

また本授業では、食品会社を標的にした企業脅迫事件や食中毒事件など、安全性に関する出来事などについても学んでいくので、物事を見分ける力や考え方を鍛えることができると思います。

例えば飲食店でアルバイトをしている学生が、フードロスや廃棄物処理の問題にまで関心を広げ、そこから発展して、食に対する潜在的な問題意識を育んだ例もあります。身近な場所で食の問題を考えるだけでも、日常の視点と環境への意識に変化が生じていくでしょう。

食卓に並ぶ牛肉(国産)
こんな流れで農場からやってきています。


仲卸業者から
精肉店・スーパー
レストランなどへ
せりで購入された枝肉は、骨を取り除き部分肉として精肉店やスーパーへ。


せり 解体後の検査、格付けをされた枝肉は、せりで落札されます。


検査/と畜・解体 さまざまな検査を合格した牛は、熟練技術者により枝肉になります。


出荷 一定期間育てられ、適正体重になったら市場へ。


農場 / 生産者 農場で、牛は生後約30ヶ月育てられます。体重は750〜800kgになります。

メッセージ

大学生になると、いろんなことに関心を抱くようになると思います。あらゆる世界への扉が開かれて、選択肢も多種多様になります。ただし、一歩も踏み出さなければ、何も進みません。身近な所にも必ず課題があるはずですから、できれば自分の力で自分の取り組むべきテーマを見つけてほしいです。

最後に一つ言いたいのは、大学生はもう「大人の世界の住人」だということです。この点については、まだまだ自覚できていない人が多い印象があります。自己責任があることを自覚した上で、いろんなことにチャレンジしていってほしいです。

プロフィール

坂内 久(ばんない ひさし)

東北大学大学院農学研究科資源生物科学専攻(博士(農学))。福島県生まれ。農業経済と地域経済を専門に研究。農家で生まれ育ったので、子どもの頃から「食」や「環境」、地域経済に関心を抱く機会が多かった。今でも地元の会津に帰ると、祭りに参加したり、四季折々の野菜づくりや畑の除草などを手伝っている。

KEYWORD

資源循環型社会システム

食品添加物と安全性

有機農産物

伝統食品

地理的表示

廃棄物削減

再生可能エネルギーへの転換