社会生活情報学専攻

PICK UP !授業

02

社会学を学ぶために大切なのは
「何事にも疑問を持つこと」

現代社会論

池田 緑

Midori IKEDA

  • 1・2年生選択科目
  • 金曜3限

日常に潜む理不尽や不可解な出来事――。なぜ、生きづらさや不満を感じることがあるのでしょう。それらの苦しみや辛さを改善したり、解決する方法はないのでしょうか。本授業では、それらの課題や疑問を、社会学的(あるいは「社会学の」)知識を使って理解を深めながら、検討していきます。

プログラミング

どんなことを学ぶ?

身近な経験での違和感や疑問について
「社会現象や概念」を用いて検討する

私たちが思い浮かべる「男らしさ」「女らしさ」とは、どのようなものでしょう。

わかりやすいのは「性別役割分業」という規範や役割です。男性が外で働き、経済生産性の高い労働を独占し、女性は家の中で家事や育児などを行うというもの。これだと女性の労働は無償になっています。この状況は長い年月を経て現在も続いていますが、なぜ正当化されてきたのでしょう。普段の何気ない出来事も、少し角度や見方を変えてみると、おかしな点があることに気づきます。社会学を学ぶ上では「とにかく疑う」という視点が大事なのです。

「現代社会論」に留まらず、社会学一般の授業では「日常の身近な経験」(具体)と「社会の構造や変化」(抽象)を行ったり来たりして、具体と抽象を照らし合わせて考えることが学びになります。このような発想を「社会学的想像力」と呼びます。「身近な経験での違和感や疑問」について、「社会現象や概念」を用いて改善案や解決のヒントを探るのです。自らの経験を社会学的に再解釈することを心がけることが、本授業のポイントとなります。

いろんなことに
“疑問をもつ”
ことから!

用語や概念を
正確に
把握・理解する!

新たな
世界があることを
知ることに!

どんなことが身につく?

現実と信じてきた世界とは別に
異なる世界があることを知る

「社会学的想像力」に基づき、新たに周囲を見渡してみると、社会の異なる現実が学生たちにも見えてくるようになります。これは著名な社会学者ピーター・バーガーが、社会学の特徴として挙げた「現実の暴露」というものです。

たとえば「この世の中では男女は平等である」「日本人はみんな平等である」とよく言いますが、実はこれらは体裁(外から見える、物の形・様子。外見。他人に対する見栄)です。つまり社会学の手法を身につけることによって、これまで現実と信じてきた目の前の世界とは別に、異なる世界があることを感じ・知ることができるわけです。

「現実の暴露」によって新たな現実を知り、これまで自分自身も含め、一般に信じられてきた価値観や秩序が、社会の別の現実を覆い隠す体裁であったことに気づく。これを「体裁の剥ぎ取り」と言います。そのような知的経験により、学生たちは社会を「相対化」(多様な視点:一面的な視点やものの見方を、それが唯一絶対ではないと見なしたり、提示したりすること)する視点を持つことができるようになっていきます。

難しそうで心配だけど?

用語や概念を正確に理解すれば
特に難しいものではありません

本授業「現代社会論」は、1年生を対象とした、3つある社会学系の導入科目の1つです。専門的な社会学系科目を理解するための「社会学的基礎」を身につけるのが目的です。具体的には2年次以降からはじまる「ジェンダーとコロニアリズム」「社会学の理論と方法」「グローバリゼーションの社会学」「都市論」等を受講する際に必要となる基礎を学びます。

授業内容は社会学の基礎となる内容なので、すべて重要ですが、特に難しいものではありません。授業を受ける際のポイントは、用語や概念を正確に把握・理解することです。たとえば「行為」と「行動」は一見似ていますが、社会学ではまったく意味が異なり明確に区別されており、これを混同すると議論を理解できません。今、目の前で用いられている用語や概念が何を指しているのか注意しながら考えることが、より深い理解に繋がります。

メッセージ

社会学を学ぶ上で重要なのは「疑問を持つこと」です。なぜ、目の前の社会はこのような姿をしているのか、他にどのような姿があり得えたのか。なぜ、生きづらさや不満を感じるのか。そういったことに疑問を持ち続け、その疑問を社会学の知識を使って検討するという意志が、社会学の理解を深めます。

社会学を学んでいくうちに「現実の暴露」「体裁の剥ぎ取り」「相対化」という思考やスキルが身につき、現実と信じてきた目の前の世界以外に、異なる世界があることに気づくようになります。「常に疑問を持つこと」。これは社会学を学ぼうと考えている人に、特に意識してほしい姿勢です。

プロフィール

池田 緑(いけだ みどり)

慶應義塾大学大学院社会学研究科後期博士課単位取得退学(修士・社会学)。専門はポジショナリティ研究。就職活動の際に自身の名前が女性と間違えられ性別格差を経験する。指導教員に「世の中はなんて馬鹿げているのか」と訴えると、大学院に進むことを薦められ、ジェンダーや権力関係の研究に取り組むようになる。

KEYWORD

社会学の基礎

近代社会

国民国家

社会階層

地域問題

地域格差

ジェンダー