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  • 誕生しつつある星に材料が流れ込む現場を捉えた論文が発表されました

    星が生まれつつある場所では、外部からその原料となるガスが流れ込む構造 “ストリーマー”が観測されます。最近の研究では、太陽系が形成される段階にもストリーマーが存在していた可能性が指摘されています。ストリーマーは最終的に誕生する星や惑星の化学組成に大きく影響すると考えられることから、初期の地球環境を調べる重要な手がかりとなります。

    今回、社会情報学部環境情報学専攻の下井倉ともみ准教授は、国立天文台、ドイツのマックス・プランク地球外物理学研究所、大妻女子大学などのメンバーで構成された国際研究グループにて、すでにストリーマーが検出されている太陽程度の質量を持つ天体の一つを、国立天文台野辺山45m電波望遠鏡、アメリカ・GreenBank100m望遠鏡、スペインのIRAM30m望遠鏡を用いて観測を行いました。

    観測の結果、天体に流れ込むストリーマーの供給源を検出しました。また、ストリーマーから星へ、何年ほどガスが供給されるのかをシミュレーション結果と比較したところ、星が成長する長い時間にわたって"化学的にフレッシュなガス"が外部から絶えず流れ込み続け、惑星系の化学環境が最後まで変化し続ける可能性が示されました。この発見は、惑星系の化学的環境は、星の誕生が始まる最初の段階で決まっているのではなく、星の成長が止まるギリギリまで変わり続けることを意味します。太陽系にもストリーマーがあったのだとしたら、地球に生命が誕生したのは初期から決まっていたのでは無く、運良く最終段階で適切な条件が整ったに過ぎない可能性があります。

     

    本研究は、2024年4月17日発行のThe Astrophysical Journalに掲載されました。ご興味のある方は、下記リンクの論文をご覧ください。

     

    発表雑誌:The Astrophysical Journal, vol. 965, issue 2, article ID 162

    論文名:The Reservoir of the Per-emb-2 Streamer

    著者:Taniguchi, Kotomi; E Pineda, Jaime; Caselli, Paola; Shimoikura, Tomomi; Friesen, Rachel K.; Segura-Cox, Dominique M.; Schmiedeke, Anika

     

    論文:

    https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ad2fa1

     

    国立天文台野辺山ニュースリリース

    https://www.nro.nao.ac.jp/news/2024/0418-taniguchi.html

     

    本研究はJSPS科研費 JP22K02966及び公益財団法人栢森情報科学振興財団 K33研ⅩⅩⅥ第591号の助成を受けたものです。

    画像18

    星形成ストリーマーへ、周囲のリザーバーからガスが流れ込む様子のイメージ。

    論文 研究報告