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短編小説コンクール「女子高校生青春文学賞」受賞者が決定しました!

2018年11月28日

大妻女子大学創立 110 周年記念事業の一環として実施した短編小説コンクール「女子高校生青春文学賞」の最終審査会がこのほど開かれ、入選作品が決まりました。全国の高校から沢山の優れた作品をご応募いただきました。ありがとうございました。
審査委員は工藤正廣先生(北海道文学館館長)、新井高子先生(詩人、埼玉大学准教授)、清宮美稚子先生(岩波書店)、藤波健先生(白水社)、加藤義久先生(共同通信社)の5人。学内公開方式による慎重な審査の結果、最優秀賞 1 人、優秀賞 4 人、佳作 10 人、努力賞 20 人が決定いたしました。上位入賞者は以下のとおりです。

 


 

【最優秀賞 1人】
作品タイトル:熔ける夏
作者名:原澤 日々希
学校名:鹿児島市立鹿児島女子高等学校・3年

【優秀賞 4人】(作者名 アイウエオ順)
作品タイトル:星の答え
作者名:石田 愛
学校名:清泉女学院高等学校(神奈川県)・1年

作品タイトル:ネイビー・ネイバー
作者名:大霜 由奈
学校名:学習院女子高等科(東京都)・2年

作品タイトル:四分の二のメロディ
作者名:鈴木 朋子
学校名:日本大学藤沢高等学校(神奈川県)・2年

作品タイトル:公園の忘れ物
作者名:樋口 絢乃
学校名:鹿児島市立鹿児島女子高等学校・3年


 

◎審査員の先生方の選評をお届けします(アイウエオ順)。

(新井高子先生 埼玉大学准教授、詩人)
最優秀賞「熔ける夏」は、飼っていた金魚の死からレンタルビデオ屋で知り合った男性の事故まで、高校生という若いいのちによる、精いっぱいの死の探求。灰の色の表現などからは、尖った言葉のセンスも受けとった。今後の伸びしろを感じさせる書き手だ。「熔ける夏」と最後まで競った優秀賞「四分の二のメロディ」は、将来、同じ道を歩むことを約束していた姉妹が、母の病のもとで袂を分かつ葛藤を描く。双子の設定が小説に厚みを作り、懐中時計などの小物も活きていた。綻びのようなものがどこかに生まれると、作品がより広がるだろう。「公園の忘れ物」は、主人公の男子学生が出会ったミトナが不思議。それは、生きた女の子のようでもロボットのようでも幻のようでもある。このような理に落ちない存在を描き出すのはじつは難しいはずだが、まるで心の忘れ物のようにひょっと出現している。祭りや墓地など、田舎の暮らしを背景にした「ネイビー・ネイバー」には、どこか乱暴な良さがある。ところどころに単純さを感じても、小説の勢いが読者を運んでいく。「星の答え」は、わたし、友だち、家族のすぐ先に宇宙があるという
ような感覚。世間や社会を飛び越して、じかに宇宙と対話できるのは、理系的センスと同時に若さの表現でもあるだろう。優秀賞には届かなかったが、「普通列車、春行き。」の構成力、初々しい恋心も魅力的だった。いじめの闇を手紙の文体に託した「旅立つ君に、幸あれ」が描き出す別室教室の荒涼さは、当事者世代からの告発に感じられた。
女の子どうしの約束の大事さや恋と憧れの微妙な差違など、女子高校生でなければ書けない世界がここにはあった。繊細と素朴が激しく結び合う場所に、「純粋」が立ち上がっていた。学校生活の人間関係のきつさ、家族内の微妙な立ち位置も、あちこちの作品に込められていた。高校生という枠を越えたテーマへ、今後挑戦するのも筆力を鍛えるだろう。

(加藤義久先生 共同通信社文化部長)
若者の読書離れが指摘されて久しい。全国大学生協連の調査によると、1日の読書時間が「ゼロ」だと回答した大学生は53%に上るという。本を読まずして文学の面白さを知ることはない。文学はこのまま衰退するのか。そんな危惧を抱いていたときに、女子高校生青春文学賞の選考委員のお話をいただいた。文芸担当記者として多くの小説を読んだが、女子高校生の作品を読む機会はほとんどなく、大変興味深く候補作を読んだ。
最優秀賞に選ばれた「溶ける夏」は、身の回りに訪れる「死」を意識した女子高校生の物語。生を消費しながら死が身近になっていく感覚を、みずみずしく描いて読ませた。左官の肺を撮ったレントゲンに石が映っていたことを「かっこいいね」という主人公のせりふは、なかなか書けるものではない。読者をはっとさせる言葉を書けるのは、小説を書く上で大切な資質だろう。
優秀賞の4作も印象的な作品が並んだ。「四分の二のメロディ」は異なるアプローチで病気の母親を救おうとする双子のそれぞれの思いを丁寧に描写した。しっかりした構成で二人の気持ちを書き分けて完成度が高い。不思議な女の子との出会いを描いた「公園の忘れ物」は、あえて読者の想像に委ねる展開が文学的で、荒削りながら強い印象を残す。「ネイビー・ネイバー」は幽霊とのふれあいを通じた成長譚。映画「さびしんぼう」的な温かさを感じた。「星の答え」はロードムービー的な青春小説で、1年生らしい清新さが魅力だった。
候補作15作は、総じて文章がうまいと感じた。登場人物の多くが高校生のため、せりふはリアルで、作り込まれていない普通の若者像が立ち上がってきた。一方で「青春文学賞」という賞の名前のせいか、描かれる物語が身の回りの小さな世界にとどまっている印象も受けた。想像力を武器に大きな物語世界に挑んでもらいたいとも思う。青春とは、自由な心の持ちようのことを言うのだから。

(清宮美稚子先生 岩波書店新書編集委員)
これほど多くの若い人たちの作品に接するのは初めてで、「みずみずしい感性」といった常套文句ではおさまらない新鮮な驚きの連続でした。進路やいじめの問題などに悩んだ青春の 1 ページをひと文字ひと文字刻んだ人、自分の才能にもしかしたら気付かないまま非凡なストーリーを一気に紡ぎ上げた人、そして死や不条理といった難しいテーマと格闘しながら文字通りの力作を練り上げた人、いろいろな書き手の表情が目に浮かびました。最終的には、「この人の次回作を読んでみたい」という気持ちをより強く感じることのできた作品が多くの票を集めたと思います。繰り返し読むと作品の魅力が新たに立ち現われてハッとすることもあり、「落とす」ことの難しさを肌で感じた審査でした。貴重な機会をいただきまして本当にありがとうございました。

(工藤正廣 北海道文学館館長・北海道大学名誉教授)
<未来と詩情にあふれた作品たち>
今回、七十五歳の私が選考員の一人となってこんなに若々しい人たちの清新な文章、文体、日本語に接することがおおきな喜びになったことを先ず言っておきたい。最終候補にのこった十五篇はどれもみな私を満足させた。自分がこの年頃にどうであったか何が悩みであったか夢であったか、何を人にメッセージしたいと思っていたのか、歳月のかなたに置き忘れてきていたのに気がついた。少年と少女とでは悩みにも夢にもそれなりの差異があるだろうが、本質は同じにちがいない。しかしこのように、書く、創作する機会など乏しい時代だったこともあって、私は書いたことがなかった。いま現代の皆さんの方がはるかにすぐれていると思われたのだった。とにかく三十枚を一気に読ませてしまう内容と文章だった。大人のプロフェッショナルな人たちの作品とは根本が違う。何が違うのか。みなさんはおそらく様々に仕掛けを工夫し、書くことを楽しみながら自己探求をしているように思われた。その探求が、広くだれか読んでくれ
るにちがいない、その未知の友にむけて開かれているというように。そしてなによりも清新だったのは、どのようなモチーフであっても動機であっても、深刻なものでさえ、濁りのない童心によって守護されている気配だった。実際の現実はこのように夢見るようなものではあるまいと普通にはそのように批判されそうだが、書き手のあなたたちは言わば純粋を貫いていた。私にとっては実は十五篇みな甲乙付けがたかったのが本当のところだった。最優秀、優秀、佳作、という決定になったものの、また読み返してみると、それぞれにそれぞれの珠玉のフレーズや善きことばが光っている。青春文学賞という枠内なので、一応はいわゆる短篇小説の形式になるけれども、どの作品にも、汚染されていない詩情が秘められていることに着目した。詩は散文である、という命題があるが、今回の作品群はすべて散文にあらわされたあなたたちの詩と言っていいように思った。その各人の詩情を三十枚であらわした。各作品について慾を言えば、プロットの展開に腐心して着地させる前に、こんどはもう少し文章の深さ(つまり、ことばの)にも立ち止ってほしかったが、それはこれからのことである。この執筆応募をきっかけにして、さらに書くことを、創作を忘れずに人生の分身にしたらどんなにいいだろう。

(藤波健先生 白水社編集部長)
友人、家族との関係や進路の悩みなど、いつの時代でも変わらない、身近なテーマが多いのは、「女子高生」「青春」という枠に捉われすぎたたせいか? 展開や人物造形も類型的なので、もっと想像の翼を広げ、新鮮な感性で現代社会にも斬りこんでほしい。選考者は高校生と年齢が離れているので、十代、二十代の意見も聞いてみたい。

・「四分の二のメロディ」
母の死に直面し、苦しみながらも未来へ踏み出そうとする双子の姉妹の心の動きが、よく描かれている。丁寧な文章、巧みな語りと展開に引き込まれた。懐中時計、ピアノ、「カノン」などの小道具も活きている。完成度は高いが、その「定型」を破ってほしい。

・「星の答え」
進路の悩みから、親への反発、家出、夜の海、「尾崎豊」まで、普遍的なテーマを正面から描いて、「青春文学」として安定感がある。発想を宇宙に飛ばしたところが独特。相手の表情や振る舞いから、その心情を推し量る主人公の思いが感じられて、好ましい。

・「ネイビー・ネイバー」
少年のユーレイを登場させた発想が秀逸。語り手が変わり、視点も変わる工夫も面白い。ユーレイを「お隣さん」として受け入れる過程がもう少し丁寧に描かれているとよかった。小学生から高校生になった少女の変化まで描きこめば、物語にさらに説得力が生まれる。

・「熔ける夏」
初めて「死」を現実として捉える少女の心情がよく描かれている。死んで灰になった時、神様の評価で灰の色が決まればいい、という発想が面白い。仔猫の救出劇から生まれた友情、お笑い談義を重ねるうちに芽生えていく恋心なども印象深く、光るものを感じた。

・「貧乏くじでも当たりは当たり」
ハンディキャップのある双子の妹を羨み、「普通」な自分に負い目を感じる主人公の複雑な思いが、エピソードとともによく描かれている。忽然と現れて助言を与える謎の人物は、現実か幻か不明だが、不自然さはない。秀作ゆえ、文章の粗さが散見されるのが残念。
(以上)